リニア もう一度立ち止まって考えるべき

投稿者: | 2023年12月18日

11月26日午後、「リニア市民ネット・大阪」主催の学習会「第20回リニア学習会in Osaka」が開催されました。長野県内のリニア建設現場を丹念に取材された信濃毎日新聞社取材班の方が講演されることもあって、オンラインで参加しました。

リニア工事を止めるには関西の私たちの力が必要

まず、主催者の「リニア市民ネット・大阪」代表の春日直樹さんが報告されました。
 トンネル工事は深刻な環境破壊を招く。地下水と残土の問題だ。品川~名古屋間286kmのうち246kmがトンネル。大深度地下を利用する河内平野にも地下水がいっぱいある。加えて都市部ではシールド工法でトンネルを掘っているが、各地でトラブルが発生している。会を結成して9年、勉強会に街頭宣伝、いろいろな取り組みをしているが、大阪では大阪都構想に始まって万博、カジノ問題があり、リニア、北陸新幹線延伸にまで関心が広がらない。しかしリニアは本当に必要か、リニア工事を止めるには関西の私たちの力が必要だと強調されました。

市民運動に必要なことは、ネットワーキング 連帯

続いて、「国際環境NGO FoE Japan」の柳井真結子さんが講演されました。(リニアの概略は省略して、リニア工事の影響についてのみ報告します。)

① リニア工事の影響 山岳トンネル 水枯れ(山梨実験線、長野県豊丘村)、大井川の減水問題、生態系への影響、陥没(岐阜県山口工区)、事故の多発・労災隠し
② リニア工事の影響 大深度地下トンネル 財産権の侵害、騒音・振動・亀裂、シールドマシン事故、生命健康へのリスク
③ リニア工事の影響 高架橋 騒音、振動、低周波音、日照権侵害、景観悪化、地域分断、行政の責任放棄
④ リニア工事の影響 駅工事 立ち退き問題、コミュニティの崩壊、代替地・移転先、周辺整備、関連公共事業※ 奈良市付近駅も地下駅、「長さ800~900m、幅40m、深さ30m」もの巨大な穴が掘られる!
⑤ リニア工事の影響 車両基地 滑走路のような大開発、集落の分断、移転問題 中部車両基地(中津川)、関東車両基地(相模原)は50ha!  ※ 奈良県内でも車両基地が予定されている!
⑥ リニア工事の影響 残土置き場 品川名古屋間 トンネル残土5680万㎥(東京ドーム50杯分)、森林破壊、土砂災害のリスク要対策土(ヒ素、フッ素、黄鉄鉱、カドニウム、ウラン等)があり、行き場が決まらない御嵩町ではR4年に6回フォーラム開催したが、新しい村長の下で審議会ゼロからスタート要対策土実証実験 リニア関連施設や公共事業で使われる可能性がある

<リニア事業と住民>
・計画時は住民不在、情報は提供されないし、質問は制限される。
・国策民営事業 自治体は推進の立場に立つ、公共事業にもの言えぬ立場となる。
・影響を得けるのは住民、問題が起きても責任は取ってもらえない。行政は助けてくれない、裁判では切り捨てられる。
・工事・リニア営業が終わっても、将来にわたってリスクが残る。
・今、沿線住民・市民運動に必要なことは、「監視・調査能力」、「情報収集能力」、「事業者・行政への対応・交渉能力」、「情報発信能力」を結合させて、戦略を立て、ネットワーキング連帯、世論を形成して、事業中止・計画の見直し・状況の改善を勝ち取ることだ。

リニア事業の再考を

続いて、長野県内のリニア建設現場を丹念に取材された信濃毎日新聞社取材班を代表して、前報道部次長の島田誠さんが講演されました。島田さんは、取材するにあたって、地元紙の責務、歴史の検証に耐えられるか、この報道はリニア反対キャンペーンでない、現場を丹念に歩き、事実を一つ一つ積み上げ、しっかりした根拠を持てたならば、堂々と「これはおかしい」「再考すべきだ」と書こうと取材班で確認し、2022年1~6月に計69回連載した。22年の日本ジャーナリスト会議「JCJ賞」、新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞、23年岩波書店から「土の声を『国策民営』リニアの現場から」出版されたと、まず説明されました。

全国から見た風景、信州から見た風景

 全国から見れば、静岡工区をめぐる静岡県とJR東海との対立だが、信州から見れば、リニア長野県駅周辺での家屋移転、トンネル工事の本格化による残土の処分先確保の必要性、工事現場で相次ぐ事故、まちづくりへの影響、投資の大都市への「還元」、小村の言論、電力の問題である。
・駅周辺で一般家屋だけで200世帯の移転。公共事業にはつきものとは言え、積み重ねてきた暮らしが一変。
・リニア品川~名古屋間の86%がトンネル、トンネル工事で出る残土は全線で東京ドーム46個分、うち長野県内だけで8個分。山間部に埋めるのか、外に運び出すのか。山間部に盛土して崩れることへの不安、運び出すダンプカーが増加している。 
 飯田市と阿智村の残土置き場候補地は、県が「土石流の危険がある」と判定した場所だったが、JR東海も県も地元に説明していなかった。同様な場所は19カ所もある。
 沢や谷の盛土は誰が管理の主体を担い、長期にわたって安全を担保していくのか。阪神大震災では、西宮市で40年ほど前に盛土造成された斜面が崩れ、34人が犠牲になった。「盛土なんて知りませんでした。」との声が。
・工事現場で相次ぐ事故、JR東海は発表に消極的。地域で起きている事故なので地元民は心配。
・長野県駅は郊外の駅で、地元の求めていた飯田駅との併設にならず。まちづくりに大影響する。
・県内11工区の大半は、県外の大手ゼネコンなどJVが受注。元受けJVに入った21社のうち県内は2社のみ。
・大鹿村はかつて賛否に揺れた小村 工事の音、数百台のダンプカーで観光に深刻な影響が出ている。今反対を声に出す住民は少数、人間関係は窮屈になった。他市町村とのアクセス道が改良され、「工事が早く終わるよう協力した方がいい」の声もある。「お前のところがOKしないからリニアができないと村民みんなが言われる。」と。
・原発1基分とほぼ同じ電力が必要。新幹線の3倍? 4.5倍?

構造的な問題「国策」

・3兆円の財政投融資
・用地交渉は県や市の職員
・残土の処分先確保にも情報提供
・異論が言いにくい空気
・「お前のところがオーケーしないからリニアができないと村民みんなが言われる」
・負の影響から住民を守る責務は

構造的な問題「民営」

・なぜ200戸も移転するのか
・ルート、駅の位置はJR東海主導
・工事費全額自己負担(その後に国が3兆円融資)
・初めて民間企業が新幹線を整備する   通常は鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧鉄建公団)
・「とにかく造りやすい所に造る」
・「造りやすい場所に、でなく造るべき場所に駅を」の反論  まちづくりも考えろ
・「民間企業は契約内容をいちいち明らかにしませんよ」   情報を出さない

構造的な問題「地方と中央」

・大都市へのアクセス短縮に対する渇望・・・飯田市
・中核都市へのアクセス短縮に対する渇望・・・大鹿村
・スーパー・メガリージョン構想と地方・大量の残土は地方へ、負担と不安は山村の住民へ
・工事も県内11工区の元受けの大半は県外ゼネコン(JVに入った21社のうち県内は2社) 作業員宿舎の管理も県外の事業者
・一方、大鹿村の人口は1000人を割った。

事業再考を

・地域の理解は得られているのか
・情報公開は十分か・残土の行き先、確保できるのか
・残土を長期管理する覚悟はあるのか
・工事の社会的責任、尽くしているのか
・自治体は住民に寄り添っているのか
・政治は機能しているのか
・時代に乗り遅れた計画でないのか

最後に、取材記者の思い

(移転させられる)200世帯、一つ一つに人生がある。 地域で国策に対してものを言うことの大変さ。地域の人々の関係を壊していく。
地域を挙げてリニアを誘致してきた経緯から、疑問を持っても強く出られない市町村や商工団体

最後に、読者の声

大都市間を結ぶリニア計画は、そもそも都市住民こそが真剣に考えなければならない問題だ。

報告・講演を聞いて思うことは、リニアは結局3大都市を結ぶだけのもの、地方に文句を言わせないため地方駅を設ける、難儀な用地交渉・残土管理は地元自治体に押しつける、ズルズルと国費が投入される、利益は県外のゼネコンに、地域のコミュニティ破壊、自然破壊、・・・安全性の確認されないリニアは再考すべきだと。
 奈良県内でも、奈良市付近駅、車両基地の誘致合戦のようなことが起こっています。今発生している、想定されるトラブルを理解して誘致しているのでしようか。なお、12月7日、JR東海の丹羽社長は、奈良県と三重県で地質の調査などを行う「環境アセスメント」に今週着手したことを明らかにしました。

(文責 城)

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