東吉野村 つくばね小水力発電所を見学

投稿者: | 2020年2月4日

東吉野村には、大正3年から昭和38年までの約50年間稼働していた「つくばね発電所」がありました。この電力により、山村に電灯が灯り、製材業が盛んな地域として発展していました。その後老朽化により稼働が停止していましたが、地域の人々がエネルギーの地産地消による地域活性化を目指して「つくばね発電所」を復活させ,2017年に発電が開始されました。今回、発電の現場を見学し、地域活性化への熱い思いを聞かせていただくため訪問しました。

7月1日、桜井駅に6名が集合し、車2台に分乗して東吉野村をめざしました。丹生川上神社中社は高見川、日裏川、四郷川の合流点にあり、四郷川を渡ったところに小水力発電をしている東吉野水力発電株式会社の事務所がありました。ここで、森田社長、森口取締役のお二人が迎えてくれました。
早速、現地見学です。日裏川の上流にある取水口に行きます。

日裏川からの取水口、沈砂池

取水口は元々あった位置に新設されています。訪問日は雨が降り続いていたため、日裏川から満杯の水が流入していました。ここに流れ込む土砂、枯葉等を撤去する維持管理が一苦労とのことです。

 次に、取水口からヘッドタンク(水槽)までの導水路です。この導水路は1.4kmあり、歩く予定でしたが、降り続く雨のため歩くのは中止になりました。この導水路、昔は石を並べて造られていた開渠の水路でしたが、今はφ50cmの水管を埋めています。この水管を埋めるのが難工事になったとのことでした。しかしそれ以上に、100年も昔に手作業でよくこんな導水路を造ったなという感想です。目の錯覚で、導水路は坂を上っているように見えました。

日裏川を下って、発電所に行きます。取水口から導入路を通ってヘッドタンク(水槽)に集められた水が、105mの落差で水圧管路を下り、発電所内の水車を回しています。昔は真っ直ぐ下りてきたが、今は少し右に振っています。

右の建物が発電所、左奥から水圧管路が下りてきています。左は旧発電所跡地

 発電所内には、真っ赤な色の水

車、発電機と制御盤、高圧盤等があります。水車はチェコ製のクロスフロー水車で驚くほど小さい。扇風機の羽根よりも小さかった。設置時にはチェコの技術者、竣工式にはチェコ大使も来られたとのことです。

監視制御装置の情報はインターネット経由でPCやスマホにも送られ、異常が発生すると関係者のスマホにメールが届き、先ず、社長が現場に駆けつけて初期対応をとるとのことです。

事務所で説明を受ける 奥にはチェコ共和国国旗が

古民家をリフォームした事務所でお話を伺いました。 東吉野村の豊かな大自然、一方で進む過疎化、少子高齢化、そして先人たちの知恵と思いを込めた発電所施設跡・・・。今こそもう一度、生き生きとした東吉野村を復活させたい。そんな思いを込めて、「元気な東吉野村と林業をめざす会」で構想を練っているなかで、自然エネルギーの普及を進める「ならコープ」・CWSと出会い、つくばね発電所の復活プロジェクトを進めた。2013年8月東吉野村小水力利用推進協議会設立、2014年10月東吉野水力発電株式会社設立、2015年6月工事着工、2017年7月稼動開始、売電開始となった。最大出力82KW、年間発電量は173世帯分の電気使用量、「ならコープでんき」の電力として利用されています。銀行融資19800万円、クラウドファンディング5235万円、国県補助1699万円、投資回収年数17年の予定。また、「ホタル鑑賞と学習」、吉野エコシンポジウムの開催、「吉野共生プロジェクト」の植樹祭等にも取り組んでいるとのことでした。

つくばね発電所復活の意義として、①売電収益を基金にして、地域の活性化に寄与する公益事業である。②自然エネルギーの普及に貢献する。③住民と企業(生協)との協働による事業形態のモデルとして広く発信できる。④村の近代化に尽くした先人の業績を振り返り、村民の誇りと主体的な自治意識が喚起できる。⑤以上の意義を得るための具体的な事業を実施することで、地域内の人、来村者との交流を進め、元気な地域づくりに役立てるとされています。

地域の人々の熱い思いが「ならコープ」・CWSの事業力と出会うことで、発電所建設という大きな事業を成し遂げられたことがよく分かりました。地域づくり、村興しとはこういうものかと理解できました。それにしても、100年以上も前に地元有力者が自力で小水力発電所を造っていたことには驚かされました。(城)