公民館は学びの場 学びの場を奪うな

投稿者: | 2023年9月17日
講演する長澤成次氏(千葉大学名誉教授)

 9月5日、奈良市ママさんコーラス協議会が主催した特別学習会「もっと知りたい!公民館!」が開催され、奈良市公民館を利用している者として参加しました。

現在奈良市には、1中学校区に1公民館、全24公民館があり、専門職員も配置されています。しかし、奈良市は突然、6館だけ「基幹型公民館」と位置づけて存続させ、それ以外18館は5 年をめどに「地域ふれあい会館」に機能移転する案を出しました。これに驚いた利用者が、公民館の存続を願って、「公民館とは何か? 公民館の果たす役割?地域ふれあい会館との違い そして、公民館がなくなると?」を先ず学習しようと、長澤成次・千葉大学名誉教授を招いて、急遽特別学習会を開催したものです。

「もっと知りたい!公民館!奈良市公民館のさらなる発展を願って」

長澤成次先生は、専門は社会教育学、「公民館はだれのもの 住民の学びを通して自治を築く公共空間」「公民館はだれのもの II: 住民の生涯にわたる学習権保障を求めて」を自治体研究社から出版されています。講演では、①公民館の原点と公民館を支える法制度を歴史的に確かめる、②奈良市公民館の特長、③公民館の廃止と地域ふれあい会館化で何が問われているのかを話されました。

公民館は戦後生まれた  自主的に物を考え平和的協力的に行動する習性を養うため

社会教育施設として美術館、図書館、博物館は戦前からあったが、公民館は戦後生まれた社会教育施設である。日本が平和的産業を興し、新しい民主日本に生まれ変わるためには教育の普及が何よりも必要とする。公民館を全国の市町村に設置し、ここに常時に町村民がうち集まって談論し読書し、生活上産業上の指導を受け、お互いの交友を深める場所、町村振興の底力を生み出す場所として設置された。そして、公民館の運営においては、住民参加、住民自治が原則であった。

日本国憲法には、基本的人権として学習権が明記された。生涯学習の権利。教育基本法には、家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は国及び地方公共団体によって推奨されなければならないと明記された。社会教育法には、公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もって住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。事業として、公民館は定期講座を開設すること、各種の団体、機関等の連絡を図ること、その施設を住民の集会その他の公共的利用に供すること。公民館に館長を置き、主事その他必要な職員を置くことができるとした。一定区域内・・・奈良市では中学校区域だが、松本市、福岡市、金沢市では、小学校区域に公民館がある。公民館は貸館だけではない!その根拠が法律にある。

奈良市公民館はみんなの宝

1949年9月に奈良市公民館条例が制定され、1970年、1中学校区に1館の「公民館整備計画」を策定し、1990年に整備完了した。2017年奈良市職員による「奈良市公民館宣言」が宣言された。

「公民館はこんなところです。
赤ちゃんから高齢者まで誰もが気軽に集えるところ。
つながりの輪を広げるところ。笑顔になる人生が豊かになるところ。
学びを通して幸せな未来と地域を地域の人とともにつくるところ。
私たち職員は、人と人の出会いを大切にします。
多様性を受け入れます。住民の学ぶ権利を守ります。
地域を鳥の目、虫の目、魚の目で見て情報収集し、現状を正確に把握します。
情報を発信し続けます。」

中学校区に24館、22分館 専門職員を配置し、地域の特性に応じた公民館活動をしている。防災 上も職員のいる地域配置は極めて重要だ。 教育委員会所管のもとに置かれた教育機関で、住民の生涯にわたる学びの自由と権利を保障する場。

公民館の廃止と地域ふれあい会館化(非教育機関化)の中で問われること

① 奈良市公共施設等総合管理計画  総務省の要請により、建築物系施設の床面積を3割縮減する目標を立て、総務省の試算ソフトを使用して(機械的に)公民館を減らしていこうとしている。
② 奈良市行財政改革計画  外郭3団体へ支払うR4年度当初予算額は約29億円であり、奈良市の財政面で大きな負担となっている。 ⇒本当にそうなのか、財政分析が必要だ。
③ 地域ふれあい会館化は非教育機関化であって、社会教育法の適用外になる。公民館を支える社会教育法の理念は、1)社会教育の公的「環境醸成」責務、2)公民館を支える諸規定、3)社会教育の自由(学びの自由)、4)社会教育行政・施設運営における住民自治であり、国及び地方公共団体は、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならないとしている。『九条俳句公民館だより不掲載事件』判決でもそのことが確認されたが、社会教育法の適用外になるとそれが保障されなくなる。
④ 手続き的には、「政策転換」にあたっては社会教育委員会議に諮問すべき。⑤ ある自治協議会には早い段階で廃止を伝えている。いつだれか廃止を決めたのか?
⑥ 地域ふれあい会館の問題点 公民館でなくなると・・・
 ・施設の維持管理と事業が分断される。本来一体的なもの
 ・職員が常駐でなくなると、地域課題を捉えることができなくなる。
 ・公民館における自主グループ支援ができなくなる。
 約1800の奈良市公民館自主グループ活動、この活動こそが歴史と文化のまち・奈良を支える地域文化の担い手、公共の担い手だ。
⑦ 市民、財団職員、研究者、さまざまな市民団体グループ、市議会各派と協力・協働  主権者としての市民の学びこそ、奈良の公民館を発展させるカギ

長澤先生の講演の後、200人を超える参加者から、公民館の活動を利用できていることへの感謝、公民館への熱い思いを次々と発言されました。主催者は、公民館廃止の動きを広く訴え、運動を盛り上げようと、Facebook「もっと知りたい!公民館!」を立ち上げています。ぜひ、ご覧ください。

短期間の取組みで200名を超える参加者を集めるという光景に、社会教育、公民館活動の重要性、パワーを肌で感じました。平成の合併時、長野県栄村、阿智村は合併せず、「自律(自立)の村づくり」「小さくても輝く自治体」を目指しましたが、その基礎に公民館活動、社会教育の長い歴史があったことを思い出しました。      

(文責 城)

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