これでいいのか京奈和自動車道~大和北道路の建設~

投稿者: | 2020年2月4日

(2019.5.19)小井修一氏(前 奈良自治体問題研究所理事長)

5月11日、大和郡山市市民交流館で講演会「これでいいのか 京奈和自動車道 ―大和北道路の建設―」を行いました。講演会には、会員19名、非会員7名の26名の方が参加されました。講師の小井さんは「高速道路から世界遺産・平城京を守る会」、「平城宮跡を守る会」の事務局長をされており、世界遺産会議に6回も参加して、平城京のど真ん中を高速道路が通るのはおかしいと訴えてきた。その結果、現計画が平城宮跡を避けたのは大きな成果だ。人口が減少していくなか、道路ができたとしても膨大な維持管理費が出せるのかと話されて、講演を進められました。

交通量予測が現実と大きく乖離して過大、変更なしでは済まされない

京奈和自動車道は、1987年に策定された四全総から具体化された道路。高速道路網14000km、関西大環状道路、紀淡海峡大橋の架設・・・・、人口が増加して車も増えると思っていた時の計画だ。しかし、現実に人口が減少し始め、奈良県の人口は現136万人が30年後は100万人になると推定されている。

交通量予測(国道24号、奈良市柏木町基準)も、ルート選定時(2003年)の2020年予測は66000~74000台であったが、現実(2015年センサス)は55000台である。新資料では、大和北道路完成時予定(2033年)は30500台となっている。

将来、現交通量より遙かに少ない交通量となる予測なのに、「渋滞解消のため高速道路が必要」として2900億円もかけて大和北道路をつくるが必要なのか。あって不都合なものではないが、人口が減り、税金が減り、交通量が減る時に、ぜひ必要なのか。不要不急のものを見直すことが大切だ。大和北道路は変更なしでは済まされない。

大和北道路は有料道路

大和北道路L=12.4kmのうち、南半分の郡山下つ道JCT~奈良IC間はすでに事業化されて今年3月工事が始まった。北半分の奈良IC~奈良北IC間は昨年2018年に事業化され、加えて全区間がネクスコ西日本と国との合併施行方式で整備することとされた。

従前奈良県は、公共事業で施工するのは県負担が大きいとのことで、大和北道路をストップしていたが、ネクスコ西日本が参加して合併施行方式となったことで県負担が少なくなり、ゴーサインを出した。全体の事業費は2900億円と見込まれており、県負担が500億円程度にまで減額になるようだ。しかし、国の直轄直営の公共事業は無料区間であるのに、突然ネクスコ西日本が参加して有料区間になり、巨額の県負担金に加えて通行料金が要るというのは住民利用者にとって負担増ではないか。

トンネル L=4.5km 維持管理費が高額

長大なトンネルには、常時照明灯点灯、換気装置、24時間監視装置、避難路の新設等が必要で、重要構造物としての維持管理費が高額だ。排気塔は出入り口の2ヵ所、京都側は高さ8m、郡山側は高さ30mの排気塔が計画されている。高さがこれでいいのかの問題もあるが、排気ガスが集中して排煙されることで、健康、文化財への被害も想定される。

世界遺産都市・奈良の特殊性

世界遺産登録資産(平城宮跡)の範囲は避けられた。しかし、バッファゾーンの外縁を通過したルート、構造を検討しているとしているが、本当にバッファゾーンを外れた場所なのか。また、平城宮跡だけ守れればいいのか。平城京全体が大切ではないのか。

講演後、多くの方から質問、意見が出されました。その一部を紹介します。

・大深度40m以下のトンネルとなるのかについて、大深度になるかどうか国は明確には答えてくれない。都計道路「西九条佐保線」が事業化されているが、その下を通る可能性も考えられる。それなら大深度でいかなくてもいいことになる。
・現在南から走ってきて、郡山南ICで下りるのに渋滞している。将来大和北道路の南半分ができれば、奈良ICで渋滞するのではないか。
・有料区間の大和北道路区間で儲からなければ、ネクスコ西日本は大和御所道路区間まで有料化する恐れはないのか。
・世界遺産バッファゾーンを侵すことはないのか。(以上、城)