自治体学校Zoom分科会・講座の団体受講にのべ30名参加

投稿者: | 2022年8月14日

自治体学校のZoom分科会・講座が7月30日~8月7日にかけて6分科会・講座が開催されました。奈良研はこのうち3分科会・講座を団体受講しました。

① 第11分科会「交通権を確保した交通政策と地域の交通の在り方」

地域交通への関心の高さ、深刻さを反映してか年金者組合の方が多数参加され、全体で15名の参加者でした。

第11分科会の受講者

 助言者の可児紀夫さん(愛知大学地域政策学センター研究員)の講演と長野県木曽町、兵庫県福崎町からの報告がありました。
  可児さんは、交通は、人間社会を支える基本的な人権、文化を育む、持続可能な社会を実現する、まちづくりの土台、社会的便益をもたらすものである。住民参加と自治で持続可能な地域交通政策を市民、行政、関係機関などとの共同で創りあげていくことが大切。「住民と自治」8月号で「住民の足を守ろう 権利としての地域公共交通」の特集をしているが、ポートランドの事例をよく読んでほしいと話されました。
 長野県木曽町からは、広域合併後の交通システムを「交通はまちづくりの土台」「山村に住むことは国土を守る」という理念で独自の交通システムをつくりあげた。幹線バス、地域循環バス、乗合デマンドタクシーを運行している。低廉な運賃設定でサービス格差の解消、交通空白地域の解消、住民の外出機会の増加、交通事業者の経営維持等の効果をあげている。ただ、人口減少が進んでおり、新たな対策、事業展開が必要になっていると報告されました。
 兵庫県福崎町からは、大学生送迎に特化した大学バスを市町村有償として運行し、公共交通が空白となる時間帯・夕方以降の移動手段として確保した。また、隣接する市町村とも連携して公共交通空白地域の解消を図っていると報告されました。
なお、可児さんは奈良県の公共交通基本計画は広域的な視点で考えられているので評価できると話されました。

② 第14分科会「水道広域化と民営化 広域水道に住民の声はとどかない」

県域水道一体化問題が山場に来ていることから関心が高く、9名の方が参加されました。

分科会を視聴する参加者

 仲上健一さん(立命館大学名誉教授)の基調報告の後、近藤夏樹さん(自治労連公営企業評議会事務局長)から民営化・広域化の現状と問題点の提起、奈良県域水道一体化について井上昌弘さん(奈良市議)、奈良市水道労組から報告、また、東大阪市議、富田林市議、京都府議から各地で進む広域化、企業団化の報告がありました。
 市町村での民営化の動きは住民の力で阻止したが、宮城県は上下水道、工業用水道を民営化した。つまり、自治の規模が小さければ民意は反映しやすいが、都道府県単位となるとそうはいかない。また、広域化、企業団化されてしまうと住民の意思を反映させることは難しく、民営化するのは容易となる。国は広域化を先に一層進めてくるだろう。広域化は民営化の一里塚だと話されました。

③ 第15分科会「デジタル化と地方自治のゆくえ」

 自治体の情報システムの「標準化」、個人情報保護条例の改定が迫ってきているもと、6名の方が参加されました。
 本多滝夫さん(龍谷大学教授)の講演の後、川俣勝義さん(京都自治労連副委員長)の「京都府における自治体DXの現状」、稲葉多喜生さん(東京自治労連)の「自治体業務のSaaS化の現状と問題点」、久保貴裕さん(自治労連地方自治問題研究機構)の「デジタル技術を住民のためにどう活用すべきか」の格報告がありました。
 本多滝夫先生には、昨年11月27日「地方行政のデジタル化と地方自治」と題して講演していただきましたが、2回聞いてもデジタル用語、カタカナ語は理解困難で、今回の分科会では事前にパワーポイントの資料が欲しかったです。

ZOOM分科会視聴の様子

 政府が進めている自治体DX推進計画は分野間データ連携基盤の形成を目指すもので、行政手続きのオンライン化、情報 システムの標準化、マイナンバーカードの普及はその一環だ。収集された個人情報は標準化、匿名化され、分野を跨ぐデータ連携基盤を通じて民間事業者に提供され利用される。その際に支障となるのは、個々の自治体行政の特色や自治体ごとの個人情報保護の態様で、それを障害物とみなし、自治を形骸化しようとしている。そこをどう闘うか議論したいと。

京都府では、京都府と25市町村で構成された税務の広域連合「京都地方税機構」が既に稼働しており、設立の狙いは徹底した徴税強化と人員削減。税業務共同化とシステム開発で標準化、共同化を進め、カスタマイズは原則認めない。その結果、自治体の課税自主権が侵害、住民の暮らしを守る自治体の役割の後退と住民の権利侵害という問題が出ているとのことです。

 自治体業務に民間テック企業が作成したSaaS(Software as a Service)と呼ばれるクラウドシステムの導入が進んでいる。特に、保育園の事務作業に「保育業務支援システム」が導入され、「保護者用」には連絡帳に手書きで記帳し、電話でやり取りしていたことがアプリ上で完結され、「保育園用」には子どもの登降園の管理,遅刻欠席の連絡、延長保育料の計算・・・、事務作業全般を網羅している。AI予測による文書作成、起案の補助もできる大変便利なものである。しかし、このアプリの利用はプライバシーと引き換えになり、テック企業が保育データを独占することになっている。この事実を職員も住民も知らされているのかと報告されました。

 情報システムは、自治体の独自施策が実施できるように整備させることが必要であり、国に対して自治体が独自施策を実施できる内容で標準仕様書を作成する、独自施策を抑制するような財政誘導を一切行わないよう要求すべき。また、自治体に対しも住民要求に基づく独自施策が実施できるように情報システムを整備し、できない場合はカスタマイズを行うべきと要求すべきだ。

 また、窓口の役割は憲法に基づき住民を最善のサービスにつなぐことであって、オンライン化によりセーフティネットの機能が失われることがあってはならない。デジタル技術は、自動化、機械化で自治体職員を置き換える代替手段ではなく、自治体職員が住民のためによりよい仕事を行う補助手段として活用するものだと話されました。

(文責 城)

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