ごみ処理の広域化 問題点は?

投稿者: | 2020年11月14日

11月3日、標記の学習会を大和郡山市市民交流館で行い、33名(会員22名、非会員11名)の方が参加されました。当初5月30日に開催する予定でしたが、新型コロナのため中止とし、講師、報告者の協力を得て再度企画したものです。

学習会「ごみ処理の広域化」

まず、奥谷和夫さん(山添村議)よりごみ問題について講演していただきました。奥谷さんは産廃の不法投棄に怒り、奈良を中心として全国各地を飛び回ってゴミ問題解決のために闘ってこられました。今でも各地の講演に呼ばれているとのことです。

 地球温暖化が、食糧価格上昇、食糧不安、飢餓をもたらす。洪水、干ばつ、暴風雨、森林火災などの災害の多発化、巨大化が起こっている。IPCCは、温室効果ガスの排出が続けば、災害被害が数倍から数十倍も拡大すると報告している。その中で、日本政府だけが石炭火力発電を重視している。

ごみ問題は緊急課題

 燃やしてもダイオキシンなどが発生する。埋めても硫化水素などが発生する。排水からは重金属、環境ホルモン類が流出する。これらはごく微量でも環境、生物、人体に影響を与える。しかし国は、「ゴミを燃やして温室効果ガスを排出し続ける政策」を続け、自治体の広域処理、大型焼却炉建設を押し付けている。

日本のごみは微減している。2017年度の一般廃棄物は4272万トン、938g/人・日、うち事業系が3割を占めている。産業廃棄物は一般の10倍、42000万トンあり、産廃を減らすのが大事だ。
奈良県のごみは、一般廃棄物は47.1万トン、926g/人・日、 産廃は147万トン。自治体によってごみの排出量が533g/人・日~1026g/人・日と大きく違う。分別の違い、自家処理の多少、有料化のリバウンド等によるものと考えられる。

奥谷和夫氏

奈良県の第4次廃棄物処理計画では、3Rの取り組み、廃棄物の削減とともに、「奈良モデル」による広域化の推進を掲げている。
(3R=Reduce(発生抑制)出るごみを減らす、Reuse(再使用)そのまま使えるものは何度も使う、Recyecle(再生利用)分別して資源として使う)

ごみ広域化の問題点

広域化・大型化すれば補助金が出る。国の指導に基づく大型の焼却炉の規模に合わせ、広域処理組合が焼却炉メーカーの指示のもと、処理計画を立て、各自治体に焼却ごみ量や分担金などを割り当て、それに従わせる。自治体の独自性や住民参加が損なわれる。自治体や住民の監視が行き届かなくなる。結果として、無責任な行政となる危険性がある。

ごみ問題の解決のために

ごみ問題を考えることは民主主義をつくる。運動、住民と行政が協力してこそ解決できる。各自治体や広域のごみ処理の実態をつかむ。過大な焼却炉の建設は止める。「有料化」はごみ減量にはつながらないが、ごみ問題を考えるきっかけになる。発生源での抑制、拡大生産者責任の導入が必要だと話されました。

奥谷和夫氏の講演レジメ

奈良市のごみ処理施設の現状と新クリーンセンター建設・広域化  
    (奈良市会議員 山本直子氏)

奈良市の環境清美工場は、来年で建設から40年を迎え老朽化が著しく、毎年維持補修に10~15億円が必要で、一番古い1号炉は耐震化できず震度5弱で倒壊すると言われている。また、建設当時の公害調停があり、立ち退きが迫られている。それで、建設計画策定委員会では中ノ川地区の候補地を提案したが、地元の理解が得られずに断念した。

山本直子・奈良市議

そこで出てきたのが、奈良モデルの「ごみ処理施設の広域化」。市単独ではほとんど補助金が出ないが、広域化なら国や県の補助金が得られ、広域化という枠組みで建設候補地を模索できるということで、奈良市は広域化にシフトしていった。

広域化勉強会は、当初大和郡山市、生駒市、平群町で行われていたが、奈良市がイニシアチブをとって進めるとして参加した。そして2019年12月奈良市七条地区を候補地として発表した。しかし、候補地は3~5mの浸水想定地域であることや、西ノ京薬師寺の眺望景観を損なう等の問題や課題も出ている。市との交渉では、煙(水蒸気)を出さない施設にすることも出ているが建設予算が膨らむとの指摘もある。

そんな中で、今年9月生駒市、平群町がメリットが見えないとして広域化の枠組みから離脱を表明した。枠組みが変わったことで、広域化計画の大幅見直しが迫られている。 今後の課題は、ごみ減量化計画とリサイクル向上、3Rの更なる推進を後退させないために、奈良市と大和郡山市のごみ分別の大きな違いの解消、大和郡山市の分別を上げることが必要だと話されました。

大和郡山市清掃センターの現状報告
     大和郡山市議 尾口五三氏

昔、清掃工場は九条と矢田の2ヵ所にあり、圧縮機で圧縮して埋め立てていた。昭和60年建設費約31億円で60トンの炉を3基建設した。1日180トン、年間6万5700トンの処理能力。平成30年度のごみ発生量は年間3万988トンで、処理能力の半分以下となった。

尾口五三・大和郡山市議

平成12年度にダイオキシン対策で51億円、29年度に炉の延命化と蒸気発電機の設置等で55億3262万円かかった。運転は15年間、92億6640万円で三井造船・・・に長期包括責任委託している。ごみ処理はお金がかかると今更ながら驚いた。

広域化勉強会以前は、清掃センター敷地内に新センターを建設して現センターを解体する計画だった。広域化勉強会以後、今は奈良市の動向に注意している。建設地元と周辺地域の同意は必須だ。建設費とランニングコストの削減が図られるか。七条地区なら近いしメリットが大きい。現センターから直に行ける。しかし、近くに煙突2本はどうかという意見もある。七条地区が不可の場合、郡山の施設は貸せないというのが郡山市の見解だ。
 課題は分別収集の拡大、市民への啓発だ。ごみを減らして炉を小さいものにしたいと話されました。

参加者からの質疑と意見、講師からの回答

・斑鳩町は独自の焼却炉を持っておらず、全て伊賀市の民間業者に委ねており、そのことで伊賀市よりクレームがきている。また、奈良市、大和郡山市との広域化には参加断念との記事があった。

・SDGs、プラゴミ減量が叫ばれているが、国、財界がその方向に動くかどうか。環境問題に取り組まなければ銀行融資をしないという動きもあるが、国民の運動があってこそ減らせるのではないか。

・煙(水蒸気)を出さない施設は国は余分だとして補助金を出さない考えであり、そういう施設は全国で1カ所しかない。

・焼却炉は企業の言い値、競争性は働いているのか。昔は市職員が直営で運転していたが、広域化、大型化して業者委託になった。公務の産業化だ。
・橿原市は市職員が焼却炉を運転できるよう訓練している。すべて業者任せにはしていない。

・中国、東南アジアがプラゴミ輸入を止める動きで影響が出ている。プラゴミを燃やすと高温になり、炉を安定的に動かせることができる。良質なプラゴミは再生可能だが、それ以外はどんどん燃やせということになりかねない。

・河合町は自力で現場での建替えはアセスも必要で不可能だ。天理市等との広域化には積替場が必要、分別収集も厳しくなる。

・広域化すると焼却炉は一部事務組合へ、収集は各自治体のままとなるが、収集も民間委託へと進むのではないか。

・補助金目当てで大きい焼却炉を造ったが、容量の半分しか使っていない。人口減、リサイクルでごみが減り、ごみが足りなくなった。他所からごみが欲しいという実態もある。

・担当課、担当者の役割は大きい。専門的知識の差が自治体のレベルを決める。

・現場へ行って、ごみ処理の実態をつかむことが大切だ。
                              (J)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です