奈良(の現状)ウォッチング2

投稿者: | 2020年10月19日

奈良に住んでいながら、最近の奈良を知らない。これでは時代から取り残されると、昨年5月に奈良を散策しましたが、この10月の土曜日に再度同じところを散策しました。

①超高級ホテル、奈良県コンベンションセンター

まず、①奈良市役所前の外資系超高級ホテル、コンベンションセンターです。県が県営プール、奈良警察署を壊して更地にし、土地の一部を超高級ホテル、NHK奈良放送局に売却し、残りをPFI手法でコンベンションセンター、バスターミナル、駐車場、広場、飲食物販施設等をつくりました。コンベンションセンター等は今年4月、超高級ホテルは今年7月にオープンしました。県は、コンベンションセンター等複合施設の整備・運営・維持管理を、総額219億7千万円、H28~H46年度までの19年契約で一括契約しています。

JWマリオットホテルの外観

コロナ禍のためかコンベンションセンターはひっそりしていましたが、超高級ホテルはGo To トラベルの恩恵があるようです。コンベンションホールの利用料はかなり高額です。庶民には、超高級ホテルもコンベンションホールも利用できる気がしません。

(因みにホテルの宿泊料は?、4.6万円~5.5万円、6万円~9万円という価格、最高クラスでは1泊79万円の部屋も、マリオット・ホテル奈良HPより、とにかく世界最大のホテルチェーンとのこと)

奈良県コンベンションセンターと天平広場

②開発が進む平城宮跡

次に、②平城宮跡です。広大すぎて人影はまばらにしか見えません。第一次大極殿、朱雀門に続き、南門が復元工事中です。復元工事中の南門の足場から南を見ると、広々とした敷地の先に朱雀門、またその先に広々とした敷地があります。東の若草山から続く大和青垣に囲まれた広大な土地に魅力を感じます。 平城宮跡が世界遺産として登録された理由は、「地下に眠る遺構が当時の都中枢の構造を今に伝えるものであり、また木簡が社会、経済、そして人々の生活の様子をいきいきと伝えていることにある。」とされています。それを保存調査し、見せてくれるのはありがたいことです。しかし、国費だからと何百億円もかけて第一次大極殿、朱雀門等の立派な建築物を建てることは必要なのでしようか。本物は見たいですが、偽物は・・・。

 (復元施設や駐車場等で敷地がコンクリートやアスファルトで舗装されることで地下に眠る遺跡の破壊が進むことに心を痛めます。)

平城宮跡・南門から朱雀門を展望

  国道369 号(大宮通)を挟んで南側に広大な更地があります。積水化学工業(株)跡地、約4.9haです。県が買収して、駐車場、休憩施設、 便益施設等を整備する計画で、近接する朱雀大路東側地区とあわせて、総事業費100億円とのことです。これこそ壮大な無駄遣いになりそうな気がします。

(県によると南門は令和4年4月に完成予定、続いて新たに東門の整備を計画して国に要望しているとのこと。また、国道南側の広大な敷地は平城宮跡公園と一体となった公園や駐車場の整備を計画しているとのこと)

国道を挟んで南側、積水化学工業跡地

③奈良公園バスターミナル

県庁東の奈良公園バスターミナルは、昨年4月13日にオープンしました。265台も駐車できた県営駐車場を壊し、45億円もかけて造った、16バースの乗降場のあるバスターミナルです。ここではバスは駐車できません。乗客が観光中、バスは他所で待機します。当初、使い勝手が悪く、苦情も出て利用数が少なかったようです。それで、利用手続きが改善されたようで、国道にも案内の立て看板が設置されていました。

奈良公園バスターミナル入り口

しかし、バスターミナルの入口にはバリケードが置かれてあり、バス運転手が電話しないとスタッフが来ないようです。一部の店舗は臨時休業していました。奈良の魅力を発信するために設けられた300人収容できるレクチュアールームは今年4月からは貸館となり、訪問時は閉鎖していました。

④𠮷城園周辺地区整備

奈良公園バスターミナルから道路をはさんで東が吉城園周辺のホテル開発地です。知事公舎、副知事公舎、吉城園、きんでん健保組合保養所等を含めて開発し、高級ホテルを建てさせて地代収入を得ようとするものです。令和4年度完成予定をめざして建物の解体等は始まっているようですが、外からは分かりませんでした。

⑤高畑町・旧裁判所跡地

鷺池、浮見堂の南にある高畑町裁判所跡地は、今年5月に庭園、茶室、飲食施設がオープンし、引き続いてリゾートホテルがオープンしました。庭園については無料で一般公開されています。今までは入ることができなかった跡地に入ることができる、崩れかけていた土塀が新しくなったことはよかったです。しかし、これらはリゾートホテル開発とは別に県が独自にやれることでした。

整備された庭園・飲食施設

問題は、ここの土地は古都法の買入れ地です。開発をさせないとして買入れた土地です。それなのに、他の法律を持ってきて、それも不可解な解釈をして、高級リゾートホテル開発を可能にしてしまった。法の趣旨を捻じ曲げて自分の都合のよいようにしてしまったことです。また、高級リゾートホテル、飲食施設の価値を上げるかのように、県が代わって庭園を整備したことだと思います。まるで高級リゾートホテル内の庭園のようです。

ホテル入り口の真向かいにゾートホテル建設反対の横断幕

久しぶりに奈良を見て回り、いろいろと再発見することができました。コロナ禍により人通りは少なく、施設の利用は少なかったですが、Go To トラベル、奈良県民限定の「いまなら。キャンペーン」により、高級ホテルほど集客しているようでした。奈良においては、文化財の保存と活用のバランスが特に大切です。観光振興ありきの経済性重視に走ることはあってはいけないと思います。                               (J)