講演会「市民と野党の共闘と野党連合政権の展望」

投稿者: | 2020年4月17日

講師 冨田 宏冶 氏(関西学院大学教授 大阪革新懇代表世話人)

3月20日、「大和郡山憲法共同センター」主催の標記講演会が大和郡山市内でありました。その概要を紹介します。講師の富田宏冶先生は、日本政治思想史、近代日本におけるデモクラシー思想の研究をされ、原水禁運動を推進し、原水爆禁止世界大会起草委員長をされています。「住民と自治」誌2019年7月号には「分析 大阪府市クロス選」を寄稿されています。

新型コロナウイルス感染症への政府の対策をみていると、✕✕に権力を持たせる危険性が露わになっている。現場では混乱、悲鳴が上がっている。モリカケ、桜は、隠ぺい、ごまかしで逃げられるかもしれないが、新型コロナウイルス感染症対策ではそれができるか。ポリュリストは非合理、こんな時期にうまく対応できない。新型コロナウイルス感染症に対して、非科学、非合理性では対応できないと警告して講演を始められました。

政治的激動の時代① 民主主義、反独占の運動が世界の政治を動かし始めている

トランプをはじめとした世界的な右派の台頭の中、韓国国民はロウソク革命で朴槿恵政権を退陣させ、民主化運動をしてきた文在寅大統領を誕生させた。そして、南北首脳会談、板門店宣言、米朝首脳会談へと緊張緩和を一気に進めた。一方、安倍政権は北朝鮮の脅威を理由に日米同盟の強化と改憲を煽ってきたが、トランプにまで裏切られ、世界の政治の流れから取り残された醜い姿をさらした。

アメリカでは、オカシオコルテスが史上最年少29歳で下院議員に当選した。彼女はピースアクションに支援され、原水禁世界大会に参加している。 沖縄では翁長知事の急死を受けた知事選挙で、オール沖縄の玉城デニーさんが翁長さんの得票数・得票率を上回る票を獲得して、自公維の候補に圧勝した。沖縄に新しい基地はつくらせない意思を示した。

政治的激動の時代② 貧困と格差拡大 生きづらさを抱かえた人々にどう寄り添うか

市場原理主義とグローバル化の行きついた先は、貧困と格差の恐るべき拡大だった。アメリカでは上位1%の資産が下位90%の資産を超えている。日本でも上位40人の資産が下位50%の資産を超えている。中間層の没落と崩壊、不寛容とポリュリズムが蔓延している。一方、「俺たちは99%だ!」のリアリティーも高まっている。

日本で貯蓄ゼロ世帯の割合が急増している!「あの民主党政権・・・」を上回る安倍自公政権のひどさ・・・ 安倍自公政権の間に貧困が深刻化している。
 ■ 20歳代の貯蓄ゼロ  2012年 38.9% → 2017年 61.0%
 ■ 50歳代の貯蓄ゼロ        32.4% →          43.0%
貧困と格差の拡大の中で、明日への不安に常にさらされ、政治に関心を持つ余裕すら奪われた人々にどのように寄り添うか。「選挙に行かない者が悪い」という上からの目線ではダメ。再分配こそ使命とする政治の本来的な優しさ、「あなたに生きていてほしいんです」と言える優しさが大切だ。

政治的激動の時代③ 没落と崩壊の危機に直面した中間層の衝撃 ポリュリストの跋扈

   移民、民族的マイノリティ、宗教的少数者、性的マイノリティ、障害者など弱者に責任を転嫁、エリート、官僚、公務員、学者も標的にする。叩けさえすれば敵は誰でもいい。憎悪と排斥、ヘイトクライム。人権、「個人の尊厳」はタテマエだとして否定し、本音で語るリーダーを待望する。 ポリュリスト トランプ、ルペン、橋下、安倍が跋扈する。

政治的激動の時代④ 維新の跋扈 市民を分断し、分断を組織化・固定化する 

 維新の本質を曝け出した長谷川豊 「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!」これは弱者へのむき出しの憎悪だ。維新は貧困と格差の拡大に直面する大阪の街を背景に住民の間に生じていた分断を顕在化させ、中堅サラリーマン層・自営上層の「勝ち組」的気分感情をポリュリスト的に煽り、支持基盤を広げていった。

 維新は選挙・住民投票を繰り返し、分断を組織化、固定化した。それを通じて維新をモンスター的集票マシーンへと変貌させた。国会議員、地方議員150名に、1日300握手、600電話、10辻立ちのノルマを課し、監視役を派遣してノルマを日々点検している。
「身を切る改革」=新自由主義改革を支持する層を組織する組織政党へと成長した。大阪の維新の組織票は、参議員選挙では2回連続140万票、堺市では14万票、大阪市では60数万票を確保している。が、それ以上ではない。

これに勝つには投票率を上げるしかない。空中戦から組織戦・陣地戦へ

大衆の不安・不満を煽り、敵を叩いて喝采を集め、マッチョなリーダーへ白紙委任を迫るポリュリズム的政治手法。しかし、「小泉構造改革」「政権交代」「ハシズム」をもたらしたポリュリズム的政治手法にも限界がある。「風」に煽られ、「構造改革」や「政権交代」に期待を裏切られ、ハシズムにも愛想をつかした1000~2000万人の大量棄権層が生まれた。
「風」には煽られず、行き場を失った大量棄権層に対して、対面的な政治対話を通して強固な支持を広げる組織戦・陣地戦の時代へ突入した。
2005年から2016年の国政選挙の投票動向では2000万票の大量棄権層は棄権に止まった。
自公維と野党との1000万票の差は固定している。足らない1000万票をどこから獲得するか。
 安倍政権下で分断が固定化し、何があっても離れない安倍支持層が生まれた。低投票率に助けられ、決して多数派ではないが強固な支持層の力で勝利している。安倍政権はマスコミ対して政治の報道をするなと圧力をかけている。(棄権層が目覚めないように)

 投票所から遠ざかっている人々に投票所に足を向けてもらうにはどうしたらいいか?
① 2割=2000万人の大量棄権層  ← 希望の灯
2009年総選挙(投票率69%)で民主党に投票し、政権交代を実現した。しかし「直ちに健康に害をもたらすものでない・・・」(この発言は酷い!)民主党政権に失望し、棄権に回った。政治に失望した人々に希望の灯をいかにして点すか。
② 3割=3000万人の無関心層  ← 生きづらさへの寄り添い
そのうちの何割かは政治に関心持つ余裕さえ奪われ、明日の暮らしに常に不安を抱いている人々で、生きづらさに寄り添う政治が必要

政治的激動の時代⑤ 99%側の反撃  キーワードは「真実」「寛容」

・オキュパイ運動とバーニー・サンダース候補の健闘  イギリス労働者党コービン党首の再選
・ サンダースは支持者を増やして、民主党員を増やして躍進してきた。投票率を上げることが勝利への道。

政治的激動の時代⑥ 「野党は共闘!」を迫る市民社会

政治的激動の時代⑦ 安倍暴走政権の「戦争する国づくり」に抗して 野党連合政権の展望

・2016年参議院選挙一人区 32の一人区すべてで野党統一候補が成立 11勝21敗(前回比9増)
投票率が上がり勝利した。
・2年間に及ぶ市民と野党の共闘の努力は前原の裏切りで一瞬にして瓦解?
民進党が解党して「希望」に合流したが、「排除いたします・・・」
寛容な改革保守のはずが、「不寛容なポリュリスト」の本性が顕わになった。
共産党が67選挙区で候補を取り下げ、249選挙区で立憲野党候補一本化した。
まるでオセロゲームのように総選挙は展開した。一面白が覆うかに見えた盤面が、前原の裏切りで一瞬にして黒に。しかし「排除」の一言で盤面に次々と白が復活。決して「諦めない市民」と共・社が隅を死守していたからだ。

講演する冨田宏治氏

形勢転換のキーワードは「排除」と「寛容」だった。

・市民連合と立憲5野党が共通政策で合意 憲法改正の阻止・・・・・
・2019年参議院選挙一人区で野党統一候補が成立 10勝22敗  改憲勢力3分の2に届かず
共闘効果は健在  4野党の比例得票よりも統一候補の得票が多い。
しかし史上2番目の低投票率48.80%、大量棄権層に希望の灯は点ったのか。野党統一候補が勝った選挙区では、岩手56.6%、長野54.3%、滋賀52.0%・・・であり、大量棄権層の一部が動いた。希望の灯は少し点った。
・れいわ新選組の躍進
4億円超の寄付金、228万票2議席確保 ・・ 生きづらさを抱かえている人々へのよびかけと寄り添い、「個人の尊厳」を守る社会と政治の訴え、これが若い無関心層、大量棄権層に訴える力があった。

 森友決裁文書改竄、「桜を見る会」、安倍政権は窮地に立っている。加えて、新型コロナウイルス対策のお粗末さ、非科学性に国民の怒りが沸騰し、「安倍政権ふざけるな」の声が沸き上がっている。このような時、野党がバラバラでは勝てない。「真実」と「寛容」をキーワードにして、野党連合政権を展望していこうと話されて冨田先生は講演を終えられました。

 会場からの意見に応えて、貧困は見えないが貧困は確実に広がっている。プライバシーもあるが見る感性が鈍ってきているかもしれない。地域地域で貧困を見つけ、寄り添い、貧困・格差の是正をしていくことが大切と話されました。
                             (文責 城)

  

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