第65回自治体学校in岡山、Zoom視聴、概要報告

投稿者: | 2023年8月21日

7月22日~24日、岡山市で行われた自治体学校に奈良研から8名の方が参加されました。お疲れ様でした。参加された方に別紙のとおり投稿していただきましたので、ぜひお読みください。また、奈良研としてZ00Mで団体視聴しましたが、その概要を報告します。

7月22日、全体会をZ00Mで視聴しました。参加者は3名でした。
まず、中山徹・奈良女子大学教授(全国研理事長)記念講演「厳しさが増す自治体を巡る状況 では、どうすればいいのか?」です。

7月22日、Zoom視聴の様子

安保三文書の改定、社会保障改革、新たな成長戦略としてのデジタル化といった国の政策により、多くの自治体は、①国の政策を無批判に受け入れる、②大型開発、インバウンドによる地域活性化、③公共施設の統廃合、民営化・民間委託による市民向け施策の削減、④市民参加には背を向ける政策を推進してきた。それで地域と市民生活はどうなるのか。①地域から平和、安全が奪われる、②地球環境への負荷が増大し、災害に脆弱な地域が増える、③国民生活が不安定化する、④地域が衰退する、⑤住民自治と団体自治が縮小することになってしまう。全体的に見ると、アメリカの世界戦略に日本が新たな内容(集団的自衛権、敵基地攻撃能力)で組み込まれ、日本政府はデジタル、AI、EV等を中心とした成長戦略を推し進め、これらを進めるために地域と自治体の再編が急速に進むという流れだ。この動きが顕著になったのが2022年、23年ではなかったかと、中山先生は先ず総括されました。

 次に、横浜市長選挙、杉並区長選挙、大阪都構想住民投票での投票を分析して、投票率の上昇、特に若者、女性の投票率の上昇に、地方政治が動く条件がある。投票率が上がるということはどういうことか。今まで政治、社会に不満を持っていたが、どうしていいか分からない層が投票に行く。投票率が上がることは、政治、社会を変えたいという票が増えること。地域を破壊から守りたいという票が増えることだ。今の政治、社会をおおむね維持したい層は、選挙の重要性を理解しており既に投票している。地方政治を変える条件は投票率の上昇、特に若者、女性の投票率の上昇だ。投票率が上がらない限り政治は変わらない。

地方政治を変えるためには、①政策:原因がどこにあるのか、どのような新たな政策が必要なのか。

②主体:どのような政治勢力が伸びれば、新たな政策が実行できるのか。③方法:政策と主体を、女性、若者にどう伝えるのか。特にSNSの利用。④継続:幅広い市民運動を継続的に行っているか、の4要件が重要だ。

求められる新たな自治体政策として、①国の政策から地域、市民生活を守る。②地域と自治体の再編 (1)空間の再編:縮小、統廃合ではなく、質的改善、(2)地域経済の再編:循環型経済の確立、(3)地域福祉の再編:日常生活圏の整備、(4)行政の再編:地域化を促進する。③公共性の回復だ。

自治体を変革する主体は、地方政治には独自性があり、地方政治における野党共闘。政党レベルだけで考えるべきではない。大阪のように維新が多数を占めている地域では、反維新の共同が成立する。本来であれば地方は国政よりも市民団体、労働組合と政党の関係が密であるはず。市民団体、労働組合が幅広い政党と議論、連携できるようにすべきだ。

最後に中山先生は、まちづくりは人づくりだ。どのような人をつくるのか。地域に関心を持ち、地域をよくするために共同で取り組む人をつくる。言い換えると自治能力の高い市民だ。高層ビルが建ち、高速道路が通り、大型商業施設が建設されていても、まちに関心のない人ばかりだと、そのようなまちは確実に衰退する。

どうすればそのような人をつくることができるのか。人は実践を通じて成長する。市民がまちづくりに関わる中で、自治能力の高い市民に成長する。市民参加の重要性は、参加を通じて自治能力の高い市民を育成すること。これは自治体にとって最も重要な仕事だ。自治体が先に述べたような政策を展開するためには、市民の支持が不可欠。

市民運動に参加する市民を増やす重要性は、市民運動の目標を達成するためだけでない。市民が市民運動に関わることで、地域に関心を持ち、自治能力の高い市民として成長する。そのような取り組みを通じて、地方政治の変革が可能となると強調して、講演を終えられました。

岸本聡子・東京都杉並区長「地域の主権を大切に、ミュニシパリズムのひろがり」記念講演されました。

岸本聡子さんは2022年杉並区長選挙にて「公共の再生」「草の根の民主主義と自治」を掲げて立候補し、投票率を上げることにより僅差で当選されました。今年の杉並区議会選挙では、杉並ドラフト会議、共同街宣等を行って、投票率が4%上昇、2万人が新たに投票することにより、議会の景色が変わった。女性が24人/48人と半数になり、新人15名当選、現職11名落選、上位4人は新人女性で5600票以上の圧倒的な得票であった。30歳代、特に女性の投票率が上がった。若者層には政治を変えたい意識はある。それをどう政治へ、地域へ繋げるかだと先ず話されました。

ヨーロッパでは、新自由主義、行革に抗して、地域主権や自治を目指す自治体が現れ、ミュニシパリズムというコンセプトでつながっている。選挙による間接民主主義に限定せず、地域に根付いた自治的な民主主義による合意を目指している。行き過ぎた市場化・民営化で失った公共財(コモンズ)をとり戻す住民運動でもある。 ミュニシパリズムとは、The Movement(労働運動、住民運動)、The Power(地方政治 権力の獲得を目指し、権力を取る)、The Economy(地域経済の民主化)の循環だということで、具体的に話されました

「地域と自治体 最前線」として、3人のリレートークがありました。そのうちの一人、森藤政憲 ・岡山県奈義町議会副議長「奈義町の子育て支援の到達と課題」を報告されました。森藤さんには、2016年5月奈良研が奈義町を訪問した時に、大変お世話になりました。

奈義町は平成の大合併時に住民投票で合併をしない選択をした。「小さくても輝く自治体フォーラム」に毎年参加して各地の成果を吸収し、「町民の身近なところに目をやる政治」「良い事はどんどん進める」「箱もの建設は抑制する」姿勢を堅持し、独自の子育て支援策をしてきた。その結果が合計特殊出生率2.95となった。安心して子育てができる環境をつくった結果だ。だが、奈義町にも大型建設事業が進められる等の変質が起こっており、また、子育て支援だけでなく、結婚したいけどできない、そこにも手を差し伸べる取り組みが求められていると報告されました。

7月29日、分科会「市民の水を奪う広域化 水道広域化とダム利水問題」をZ00Mで視聴しました。参加者は5名でした。

7月29日、Zoom視聴する参加者

助言者の近藤夏樹・自治労連公営企業評議会事務局長が先ず発言されました。
先の水道法改正時は、民営化に視線が集中して広域化はあまり話題にならなかった。民営化は、大阪市、奈良市、浜松市で阻止したが、広域水道である宮城県は阻止できなかった。住民から水道事業が遠ければ関心が薄れる、広域化されれば民営化は容易になるということが教訓だ。国は、水需要減による収益低下や技術力低下を理由に広域化と官民連携を推進しているが、その裏に隠された「水余りによる財政圧迫」に触れようとしない。建設費償還と維持管理費が水道事業体経営に重くのしかかっている。ダムの財政負担は永久に続く。水道行政は、2024年度から厚生労働省所管から国土交通省、環境省の所管に移る。建設中心の行政となり、広域化、官民連携推進を加速させないか懸念だと話されました。

 続いて各地から報告がありました。木曽川の水で足りている名古屋市が、新たに導水路を建設して、徳山ダム(揖斐川)の水を長良川及び木曽川に流し、名古屋市が利用するという導水路建設事業を進めようとしている。これは、水は余っているけどせっかく造ったダムの水がもったいないという感覚を越えて、ただただ事業をしたい、無駄に無駄を重ねて金を垂れ流したいだけかと思いました。映画「ふるさと」の舞台となった揖斐川・徳山ダム、多くの住民をふるさとから剥がし、一つの村を消滅させた徳山ダム、この現状は哀しすぎます。

奈良県の県域水道一体化についての特別報告の寸前に、突然パソコンが不調になってしまい、Z00M視聴できなくなりました。

(文責 城)

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