維新政治の「改革」幻想  シンポをYoutubeで集団視聴

投稿者: | 2022年4月14日

 維新は、昨年の総選挙で「身を切る改革」「大阪でやって来た成果を全国で広げたい」と訴えて支持を広げました。奈良県内でも大きな勢力となってきています。しかし、大阪においては、新型コロナ感染症による人口当たりの死亡者数、また、完全失業率が全国最悪レベルになっています。いったい何が成果なのでしょうか。「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うもの」ですが、維新は住民の福祉の増進に何をしてきたのか、数々の事例を確認したいと、この1月開催した当研究所の総会でも話し合われました。 3月27日、大阪革新懇等主催のシンポジウム「府民の願いと大阪の未来 維新政治の「改革」幻想」が行われましたので、大和郡山市市民交流館でシンポジウムをYoutubeで集団視聴しました。参加者は8名でした。

シンポは、桜田照雄氏がコーディネーターを務め、冨田宏冶氏、小西禎一氏、松本創氏がパネラーを務められました。まず、桜田照雄氏が次のように発言しました。

桜田 照雄 (阪南大学教授、全国革新懇代表世話人)

カジノ問題に取り組んでいるが歯がゆい。暖簾に腕押し、推進勢力が圧倒的で議会で意のままに通ってしまう。維新は大阪府下で24%の得票率だが、タワーマンションの林立している大阪市西区では60%超、他50%の区が多く、東成区で30%だ。強力な支持基盤に支えられているように見えるが、果たしてそうなのか。実績や未来の主張は本当なのか。

桜田氏の発言を受けて、3人のパネラーが発言されました。

維新政治の特別な危険性・・維新政治の四つの大罪

冨田 宏冶 (関西学院大学法学部教授、原水爆禁止世界大会起草委員長)

 維新とは何者か、特に府県境を越えると分からないと思う。現状打破を求める若年貧困層に支えられているイメージがあるが、果たしてそうなのか。維新政治には四つの大罪がある。

① 熟議としての民主主義の破壊 
  民主主義の根幹である熟議の前提として、事実・真実が大切であるという価値基準を壊した。不都合な事実にはウソ呼ばわり、フェイクニュースだと。真実事実を認めず、空気のように嘘を吐く。多数決は究極の民主主義だとして、問題を単純化して「白か黒か」の選択を市民に迫る。地方自治体の二元代表制を否定し、少数者には議論もさせない。

② くらし・いのち・教育の破壊
新自由主義的緊縮政策の絵に描いたような失敗をしている。「財政再建」のための「緊縮」政策の名目で、福祉・教育・医療予算を大幅にカット、7年間で1551億円削減した。税収は年間2000億円減、負債残高は6000億円の借金増だ。大阪府の経済成長は止まっている。
 #大阪維新に殺される 新型コロナ初動の大失策。経済活動優先で人命を軽視した。また、府内医療機関を徹底リストラし、赤字施設は廃止、黒字施設は民間へ、府立病院の予算を大幅削減した。公務員削減、医師・看護師など病院職員を半減、コロナ対応の衛生研究所職員を32%削減した。保健師数は全国ワースト2、全国平均の6割しかいない。その結果、コロナ死者数は全国最多最悪となっている。
教育現場の荒廃と教員の疲弊も進んでいる。背景には深刻な子供の貧困がある。

③市民の分断とコミュニティの破壊
維新政治の本質は、市民を分断し、その分断を組織化・固定化したことにある。貧困と格差の拡大に直面する大阪の街、住民の間に生じていた分断を顕在化し、中堅サラリーマン層・自営上層の「勝ち組」的気分感情をポピュリスト的に煽り、選挙を繰り返して分断を組織化・固定化させた。そして、維新のモンスター的集票マシーンをつくった。大阪市での絶対得票率は30%、となると大阪府下ではまだまだ伸びしろがある。
固定化・組織化のカギは地方議員、維新の地方議員は239人、他党よりも多い。一人1日600本電話かければ12日で172万本、一人5,000~10,000票持つならば、180万票持つことになる。

④平和憲法・非核三原則の破壊
参院選と同時に改憲のための国民投票を。憲法審査会再開と改憲論議の推進を。ロシアのウクライナ侵攻に便乗して「核共有」まで言い出した。

維新に期待せざるを得ない何かが深く沈殿しているのではないか

小西 禎一 氏(元大阪府副知事)

 維新政治は許せないという強い憤りから府知事選挙に立候補し、政治を変えようと呼びかけたが、府民に共感が広がらなかった。府民の中にある「維新に対する期待」「維新に期待せざるを得ない何か」が深く沈殿しているのではないか。その思いに届く訴えができなかったのではないかと感じていると話して、発言を続けられました。

コロナでの大阪の死亡者数、死亡率は全国最悪。経済成長も停滞している。しかし、「維新は頑張っている」だ。維新が支持受けているのは橋下の「財政再建」への評価があるのではないか。
大阪の未来には二つの道がある。
一つは、民が主役、行政はサポート役として「公」を縮小する。都心中心主義。バクチにかけるバクチな成長戦略だ。
もう一つの道は、「公」はその役割を果たす。コロナ禍の下、公は献身的な働きをした。公務員の力は行政サービスの質を決める。都心中心でなく府域全体で住み、働く。市町村はそれぞれの区域の発展を、府は府域全体の調和のとれた発展を担う。府域内での人口対流をつくる。大阪の持てる力を伸ばす、魅力を磨く。大阪域内での経済循環、カジノがなくても人が訪れる大阪にする。

劣化したメディアの偏向報道に踊らされているだけなのか

松本 創 氏(ノンフィクションライター)

 維新をめぐる在阪メディアの問題として、読売新聞大阪本社と大阪府の「包括連携協定」、毎日放送「ほっとけない人」に維新三傑が出演、TBS「報道特集」を大阪維新の会がBPO申し立て、読売テレビ「あさパラ」吉村発言をめぐる質疑等がある。これらの根底には、営業・収益獲得の優先、報道よりも広報、権力へのすり寄り、多数者・強者への迎合、ジャーナリズム意識の希薄化、権力監視機能の低下、失われる放送倫理、報道とバラエティの境目が曖昧に、批判的報道への恫喝、刑法「侮辱罪」厳罰化の流れがある。

維新報道に問題が多いのは確かで、維新支持の大きな一因でもあるが、それだけに問題を特定するとかえって本質や構造を見えなくし、危険でもある。次のことも検討する必要がある。
・大阪で10年間、政治行政を握ってきた「改革」の実績
・熱心な選挙運動、地元活動
・自民政権に不満あるが、既成野党も支持しない「都心の無党派」を取り込む
・「既成権益」や「上の世代」に対する不満・不信
・新自由主義の内面化、改革や世代交代を求める声
・不祥事頻発やブーメラン発言もスルーされ、支持率に影響ない・・・等。

また、維新支持者へのインタビューでは、次のような発言があった。
・地域振興会などの団体が市と結託した長老支配となり、予算管理もずさんだった。
・あいりん地区の荒廃が橋下さんになって一掃され、政治の力を実感した。
・教育政策で維新に共感した。
・政治家になる窓口が広がった。他党がワクワクする前向きなビジョンを示せていない。

3人の発言の後、次の質疑応答がありました。

Q1 維新に期待する、期待せざるを得ないものは何か。

・ 「財政再建」、(市当局と組合幹部、議会が馴れ合いしていたため)公務員攻撃、組合攻撃。
 調査会社と一体となって、リサーチ政治でマーケッティングしている。だから、私学の授業料無償化(所得制限付き)も突然打ち出せた。

・ 高負担感と自己責任論が重なって、弱者への敵意となっている。高負担なのに自分には回ってこない。自分が高齢者になったとき誰が支援してくれるのか。大阪がこれほど貧困でいいのか。自分が支えさせられていると思っている中堅層が維新を支持している。維新は中堅層に何が受けるのかを緻密に計算している。

Q2 マスコミは事実を伝えないのではないか。

・ 現場の記者は、毎日の囲み取材、首長の言うことに振り回され、言ったことを伝えるだけ。地方行政はどうあるべきなのか基本理論がない。価値判断できない。ネットとの競争もあり、即応性、早く伝えることが求められて批判的検証はしない、できない。

Q3 政党リーダーと首長を兼ねている。この政治の在り方をどう見るか。

・ 首長をとる影響力は大きい。実績を、身近なことを話せる。親近感が湧く。身近なことを着実にやってくれることに期待する。「大阪でやってきたことをやらせてくれ。」
・ 首長をとることは、実績をアピールできるし、与党議員を増やすことができる。維新はローカルに戦っている。全国政党になりきれない限界もあるが、全国に拡大しようとしている。

 最後に3人の方が次のように発言されました。

小西 禎一 氏
維新批判、都構想批判・・・、批判ばかりでなく、具体的な対策を訴える必要性がある。府知事選挙の 時、小西は都構想に縛り付けられたが、維新は都構想をスルーして実績をアピールした。具体的な政策 施策を打ち出すこと、客観的に正しい批判をすることが大切だ。ウィングを広げて、情報バブル内の人間 だけに伝わる政策施策でなく、相手側にも伝わる努力が必要だ。

松本 創 氏
「10年間活動してきて一貫して支えてくれる人々が一定数いる。それはフワッとしたものだ。」と維 新幹部が話したことがある。バラバラになった個人がネットを通じて固まったとも言える。コアな支持層 と反支持層の間の中間層にどう訴え、支持を広げられるかがカギだ。

冨田 宏冶 氏
 住民投票で2回勝っている。このように闘えばいい。1回目で橋下氏が政界引退した。2回目では松井 氏も引退すると言った。投票率が60%を超えたからだ。大阪都構想に2回勝った。維新はカジノだけで は闘えないのではないか。
大阪では維新は絶対得票率3割獲得している。反維新は2割だ。あいだの5割をどちらが獲得するか、 投票率を65%に引き上げられるかだ。それには、反維新を1本化にして、民主党に失望した層、無関心 層にどう結びつき、訴えられるかがカギだ。大阪では、1/4の子どもが貧困層だ。維新によってますま す貧困になっている。ここにどうアプローチしていくかだ。

(文責 城)

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