第23回 総会記念講演             「住民が主役の元気で温かいまちづくり」

投稿者: | 2022年2月25日

講師藤澤 直広 氏(前 日野町長  自治体問題研究所理事)

総会記念講演には、26名の会員が参加しました。講師の藤澤直広さんは、平成の大合併の嵐が吹き荒れるなか、自分たちのまちを守ろうと決意し、滋賀県職員を退職して立候補され、2004年7月日野町長に当選されました。以後4期16年町長を務められました。どういう思いで首長をやってこられたのか、どう地方自治の本旨を実現しようとしてきたのかを聞こうということで、この講演会になりました。

藤澤さんは、「晴天を衝け」渋沢栄一と「カムカムエブリバディ」の話から講演を始められました。渋沢栄一は私財を投げうって養育院をつくった、アメリカへ行って戦争反対を訴えた。また、「NHK朝ドラだけは平和主義」という川柳があるように、朝ドラはその時代の背景として戦争の悲惨さを訴えざるを得ない。朝ドラを見て、講演の「つかみ」にしてきた。

憲法のすべての条項を尊重し町政に生かす
 集会のあいさつには憲法を入れて話した。例えば文化の日には、11月3日は戦前は明治節(明治天皇の誕生日)だったが、昭和21年11月3日「平和と自由を愛する文化国家の建設」と憲法公布の勅語を出した。そして、この日が文化の日(自由と平和を愛し文化をすすめる)になった。文化国家の反対語は軍国主義国家だ。戦争責任には被害と加害がある。文化の日にはこれを含めてあいさつした。

国政は議院内閣制だが、地方自治体の首長は住民の直接選挙で選ばれる。地方議会が少数与党でも首長になれる。やっていける。私はずっと1/3の少数与党だった。住民との結びつき、住民運動とのタイアップが大事だ。補正予算事業が予算委員会で否決されたが、住民運動とタイアップして閉会日に可決したこともある。
首長の権限には、予算の調整権、執行権がある。やりたいことを否定されてできないことはある。しかし、やりたくないことはしなくてもいい。

大切にしたこと 
・憲法のすべての条項を尊重し町政に生かす
・ 国政、県政に対して、町、住民の立場で判断する
・ 憲法15条「公務員は全体の奉仕者」の職員への徹底
「町長の顔色を見るのではなく、住民のための仕事をするように」と言ってきた。
・ 公平公正な行政を貫く
・ 住民、住民団体との意思疎通
1階にも町長席を設け、住民、職員とのコミュニケー ションを図った。

力を入れた施策など
・ 蒲生町との合併を白紙にした。
・ 日野中学校の改築  30億円、1期目に着工することができた。
中学校給食の実現(自校直営)  給食反対、民営化の声を押し切り、9年かかって実現できた。
・ 国や県の予算の確保
「国とのパイプがないと予算がつかない」ことはない。これはウソ
国とのパイプを強調することは国政与党の配下になること。地方自治の枠を狭める「自殺行為」だ。
・ 都市と農村の交流拡大(田舎体験)
都会の生徒に修学旅行に来て宿泊してもらう。1戸あたり3~5人の生徒を宿泊させ、自然とふれあい、人とふれあい、農家の生活を体験してもらう。宿泊できる家を最大150戸組織した。交流できて地域も誇りを持つことができた。奈良県内の私学、ベトナムからも来てくれた。
・ 近江鉄道日野駅再生事業
100年来の古建築物で日野町の玄関、これをふるさと納税を利用して再生した。
・ 戦後60年事業、戦後70年事業
区長会、遺族会など各種団体と実行委員会を設立し、元全国遺族会会長古賀誠氏、長崎市長田上富久氏に講演してもらった。古賀氏は憲法9条が大切と話した。
・ 東日本大震災被災者の受け入れ
原発問題学習会 安斎育郎立命館大学教授に講演してもらった。
・ TPP県民会議結成  県内6町長の了解を得て、農協中央会、医師会も巻き込んで結成した。

議会、住民運動
・ しっかりした政策と議論、情報開示
・ まち研、平和運動など地道で開かれた取組
自治研、まち研で議論、研究する。コツコツとした取り組みの上で花が開く。
・ 国政、県政を変える取り組み(野党共闘)
野党共闘滋賀4区の会呼びかけ人、4区日野の会代表
講演後、参加者の多くの質問に次のように答えられました。
・ 予算のとり方については、きちんとまじめにやれば予算はつく。国の政策に注視し、アンテナを高く張って情報を収集する。情報収集能力を高める。
・ 政策立案にあたってはいろんな住民団体の声、課題を聴く。ベースとなる行政課題、困っている人をどう助けるかが重要だ。目立つ新しいことをすることではない。
・ 財政運営はずっと厳しかった。国家財政は増えているが、地方財政は伸びていない。地方財政計画を上げるのが根本問題だ。厳しい財政の中、事業ができないと断るのも町長の責務だ。
・ 移住定住対策では、空き家登録制度に力を入れた。住まない家にお金をかけて維持し最後は壊すよりも、今なら売れるよと説得した。
・ コンサル委託が多くなるのもやむを得ない。ただ、職員の能力向上、教育にどう取り組むかだ。職員には「雑談しろ」と言ってきた。オープンに議論することが大切で、集団討議で質を高める。風通しのよい組織、研修の機会を保障することが大切だ。

(文責 城)

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