ストップ!リニア中央新幹線 ~リニアは本当に必要か~

投稿者: | 2023年4月13日

3月15日午後、奈良県教育会館で「問題だらけのリニア中央新幹線を考える学習会」を「ストップ!リニア市民連絡会準備会」と共催で行いました。柳井真結子さん(国際環境NGO FoE Japan委託研究員)が「リニア新幹線がもたらす社会環境への影響」と題して講演し、今井光子さん(県議会議員)が県議会での論戦を報告しました。参加者は26名でした。まず、柳井さんが講演しました。

リニア学習会の様子

リニアが今の時代に必要なのか検討されないまま、イケイケどんどんで進められている

柳井真結子さんは、リニア中央新幹線の概要を説明した後、開発の経緯を話されました。リニアの研究がスタートしたのは1962年、基本計画が決定したのは高度成長期の1973年、宮崎実験線、山梨実験線の建設・走行試験を経て、東北大震災の起こった2011年、震災対応に大変な時に整備計画が決定された。そして3年後の2014年に工事実施計画その1認可、環境影響評価公告があり、工事が始まった。工事が始まると各地でトラブルが発生し、工事差止の提訴がなされている。

なぜ高度経済成長時の計画が、今の時代に見直しもされずに進められるのか、おかしいではないか。

リニアの問題点 ―計画・プロセス、公共交通機関としてのあり方、環境社会影響―

次に、柳井さんはリニアの問題点、特に環境社会影響について一つ一つ説明しました。
① 計画・プロセスの問題点
 ・「国家的事業という民間事業」国が決めたことだからで文句を言わせず、民間ということで情報を出さない
 ・透明性や責任の所在が不明確
 ・国民的な議論の不在
 ・ずさんな計画、環境アセスメント  事故が続発
 ・採算性の疑問
 ・財政投融資の活用3兆円 全線開業最大8年間前倒し
・ゼネコン談合事件・住民への不誠実な対応
② 公共交通機関としてのあり方
 ・安全性(健康、緊急時、技術)への疑問
 ・大量エネルギー消費、CO2排出  既存の新幹線の4倍もの電力消費
 ・大都市への集中  スーパーメガリージョン
 ・一部の層の利便性や経済性の優先
 ・環境負荷の偏り
③ 環境社会影響
・生態系への影響  魚や貴重なトンボが消えてしまった
・地下水、水脈、河川水への影響 水枯れ、水は貴重な財産、水がなければ住めない
・災害リスクの増加・生活影響  騒音、振動、交通、粉塵、日照、電磁波、景観・・(10年間ダンプが通る、ダイナマイトの発破で石垣崩れる、陽があたらない、会話できない)
・土地収用、住民移転  誠意がない 地域住民に説明がない
・地下使用による住民の権利侵害 大深度地下(都市部、40m以深)地方部では30mも説明補償ない?
・地方の公共事業依存  飯田市ではリニア関連駅周辺整備費に13億円以上
・大量のトンネル残土  5680万㎥の1/3しか処分先が決まっていない 有害物質含有の要対策土(環境アセスで言及していない!)
・地域の混乱、分断    狭い地域で賛成派、反対派に分けられてしまう 国が決めたことだから・・

 気候変動、自然災害の頻発、世界規模の感染症の蔓延という新たなリスクに直面する今日、生態系を破壊する無理な開発を見直し、気候変動等環境変化を見込んだ環境配慮型の土地利用、新しいライフスタイルが必要な時代だ。それにリニアは逆行している。

環境影響評価 なぜリニアのアセスはずさんと言われる?

・事業ありきのアセス
・具体的な事業計画(駅等の位置や構造)を明らかにしない状態でアセス
・アセス後に変更
・事業計画の記載内容に間違いが多い
・環境影響を把握するために必要な情報が十分に示されていない
・残土置き場、残土運搬は事後評価

まずは、知ること、議論すること、提起すること

 リニア推進派はリニアで活性化しか言わない。問題点を何も言わない。
推進するにしても、リスクを十分に理解し、影響を回避し、誰も犠牲にならない計画にできれば、前向きに議論できるかも。
許容するとしても、リスクを十分に理解し、事前に影響を回避・軽減させるよう求めることができる。問題が生じたときに早期に解決を求めることができるかも。
不安を感じる、反対するのであれば、十分な情報公開、公平な発言の機会、議論の機会を求め、リスクを周知し、提起することが必要。

リニア工事の計画が来た、その時どうする?

・何もしない、なりゆきに任せる。地域内の工事の情報を得ながら静観する。引っ越す。問題が起こったら、行政に訴える。  ⇒ これでは、リニアの悪影響、被害を受けやすい。それならば、問題意識の範囲、地域の特色、戦略により、次の行動をとるしかない。

・計画段階から事業者にリスク回避、撤回を要望する。行政に仲介を求める。
・地域内の工事のみの工事影響の回避、軽減、撤回を求める。個人で、自治会で、仲間とともに運動する。
・沿線他地域の住民と連携して特定の問題(ex残土処理、家屋調査等)の解決を訴える。
・沿線他地域の住民、全国の市民と連携して、リニア事業への反対を地域内及び全国の世論に訴える。運動に展開する。

リニアに依存しないまちづくり、交通のあり方を住民参加型で検討する

これまでのJR東海の住民を無視した不誠実な事業の進め方、工事から次のことを学んだ。
・工事の実態、事業者の対応等について、利害関係者、行政、住民が十分な情報を得る。
・リニアに依存しないまちづくり、交通のあり方を住民参加型で検討する。
・行政は推進派になってしまうので、行政に中立的な立場を求める。
・専門家、議員との連携。・事業者だけに都合のよい説明会を開催させない。事業者に勝手な「住民理解」の解釈をさせない。
・影響を受ける住民の孤立化を防ぐ。情報共有、連携、協力、ネットワーキングの構築。
・積極的な情報発信、問題提起が必要と。

最後に、柳井さんは各地で取り組まれている住民運動の戦略事例を紹介して、講演を終えられました。

リニアの巨大開発よりも地域公共交通の充実を~今井光子氏からの県議会での論戦報告

今井光子さんが県議会での論戦を報告されました。

報告を聴く会場風景

 共産党県議団は議会ごとにリニアの問題点を指摘してきた。現県政はリニアに非常に前向きであり、トンネル残土捨て場も用意して、2023年環境影響評価開始、37年リニア開通を見込んでいる。リニア新幹線奈良市付近駅の設置、大規模広域防災拠点2000m滑走路の整備、関西国際空港接続線構想の「リニア関連3点セット」は巨額の費用をかける大開発事業であり、共産党は荒唐無稽だとして反対している。

 リニア奈良市附近駅は、JR奈良新駅、JR平城山駅、JR関西本線と近鉄橿原線の交差する場所付近が 候補地となっているが、場所が決まらずにアセスができるのか。奈良県にもリニア期成同盟があり、全自治体から賛助金を集め、パンフレット等を購入している。

 昨年、静岡県を調査した。JR東海は工事現場を見せず拒否したが、静岡県の環境部局は対応してくれた。環境アセス条例について、奈良県の条例は事業の円滑化が中心だが、静岡県の条例は生活をよくするため、「現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。」としており、違いがあるのが分かった。
白浜空港(2000m滑走路)も調査した。ここは硬い岩盤を削って造られている。毎年大型の防災訓練をしている。1日2便の離発着で、年3億円の赤字が出ており、和歌山県が負担しているとのことである。

(講演・報告の後)

お二人の講演報告の後、「リニア市民ネット・大阪」の方が、大阪での活動(沿線各地との連携、現地視察、住民交流、勉強会、カフェ実施、「大阪ストップリニア通信」の発行、イベント、街頭宣伝活動、署名活動、ミーティング等)を紹介し、奈良でも早く運動をつくってほしいと話されました。

 参加者からは、リニアの工事により地中からウラン等有害物質が出てくる。リニアは騒音、振動も撒き散らかす。アメリカでは住民の反対で計画がストップしている。公害を出すことをもっと強調してほしい。

リニアは原発1基分の電力を使う・・・等の発言がありました。

最後に柳井さんは、みんなが動いてほしい、できることから動いてほしいと訴えられました。

(文責 城)

<追記>

・JR東海の丹羽社長は4月6日、約7兆円を見込む東京・品川―名古屋間のリニア中央新幹線の総工費について、資材価格が高騰する中でも「現状すぐに見通しを変える状況にはない」との考えを示しました。工法見直しによるコスト削減などで工費の上振れを抑えられるとの判断です。また、リニア中央新幹線は静岡県内で着工の見通しがたたず、目標とする2027年の開業が困難になっており、「現時点で新たな開業時期は示せない」としました。                           

・JR東海の宇野副社長は4月11日、リニア中央新幹線工事に伴う名古屋―大阪間の環境影響評価(アセスメント)について、「今年度やることは考えていない」と明らかにしました。政府は2023年中のアセス開始に向け、JR東海を支援する方針を示していました。

 

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