第46回市町村議会議員研修会に参加して

投稿者: | 2020年2月4日

(2019.01)川本雅樹(副理事長・御所市議会議員)

今年1月28日、29日の両日、(株)自治体研究社主催による第46回市町村議会議員研修会参加のため静岡に行ってきた。初日は、全体会で①「2019年度政府予算案と地方財政の課題」、②「自治体戦略2040構想と地方自治」と題する講演、二日目は3つの分科会があったが、「子ども・子育て支援新制度の現段階と今自治体で取り組むべき課題」に参加した。

2019年度政府予算案と地方財政の課題

 静岡大学の川瀬憲子教授が膨大な資料を基に、途中休憩をはさんだとはいえ、3時間にわたって熱弁をふるわれた。そのすべてを報告することはできないが、いくつかポイントと思われることを記したい。

まず、2019年度一般会計の総額は、101兆4500億円で、当初予算で初めて100億円を突破した。7年連続で過去最高額を更新している。なかでも、防衛費は5兆3000億円でこれも7年連続で急増している。一方、社会保障関係費は高齢化による増加分として4768億円が計上されたが、伸びの抑制が行われている。ここに何を重んじて政治を行っているか、明確に安倍政権の政治姿勢が現れている。

次に、「地方交付税トップランナー方式」という聞き慣れない言葉について。これは、歳出の効率化の観点から、民間委託等の「業務改革」を実施している自治体の到達度を地方交付税の基準財政需要額に反映するもので、2016年度から実施。公用車運転や学校給食の調理と運搬、道路維持補修や清掃、一般ごみ収集、競技場管理、図書館管理、公民館管理、戸籍業務や住民基本台帳などの窓口業務も外部資源を活用し、人件費を抑制し委託料などの物件費に回すことを誘導する方式のことだ。

最後に、「公共施設等適正管理推進事業債」について。2019年度の地方財政計画で4800億円計上されている。これは、公共施設の集約化、複合化等を行う際の事業債で延べ床面積の減少が要件になっている。また、既存施設の廃止は2017年度から2021年度の5年間に行うことが条件になっている。この事業債は充当率が80%、交付税措置率が50%というように有利になっているが、上からの施設集約政策の梃子になっている。 2019年度の政府予算案を眺めていると、生活者目線で住みやすい地域をどう作るかというのではなく、地方自治体の人件費を抑え、地方行政をスリム化していくことに躍起になっている国の姿が浮かんでくる。

「自治体戦略2040構想」とは何か

自治体が今後どうなっていくのか」、危機感に煽られた構想内容が専修大学の白藤博行教授によって解明された。総務省内に作られた研究会が、標記構想を2018年4月に第1次報告を、同年7月に第2次報告を行った。その概要は次のとおりだ。
『日本は、既に人口減少局面に入っており、高齢者人口がピークを迎える2040年頃の姿から逆算する形で課題を整理する必要がある。その課題は大きく3つの危機として描かれる。一つは、「若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏」、二つ目に「標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全」、三つ目に「スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ」。
そして、労働力(特に若年労働力)の絶対量が不足しており、AI・ロボティクスを使いこなし、従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる「スマート自治体」、そして情報システムの円滑な導入のための自治体行政の標準化・共通化が必要。
また、「新しい公共私の協力関係の構築」として、全国一律の規制を見直し、民間が活動しやすい環境整備やソーシャルワーカーなど技能を修得したスタッフが随時対応する組織的な仲介機能が必要。
また、定年退職者や就職氷河期世代の活躍の場を求める人が、人々の暮らしを支えるために働ける新たな仕組みと地域を基盤とした新たな法人が必要。さらに、新たな自治体行政として、個々の自治体が行政の全般を行うのではなく、圏域単位で特定のサービスだけを進めることを可能にし、そのための法律改正も視野に入れる』。しかし、これは基礎的自治体をなくすことであり、住民自治を基本にした団体自治、地方自治全体を否定している。
AIという新たな情報技術によって、公共サービスの産業化政策として情報関連企業に公共業務と財源、公共施設を開放するのが主な狙いと言ってよい。しかも、住民の所得や生活向上とはなんら関係なく行うというのが「自治体戦略2040構想」の本質と言わねばならない。

子ども・子育て支援新制度の現段階と今自治体で取り組むべき課題

2日目の午前と午後の4時間あまりを使って、京都華頂大学の藤井伸生教授が熱弁をふるわれた。非常に範囲が広いので、私なりに関心の強い項目について簡単に記したい。

まず、公立保育所の民営化が進んでいること。1975年は63.3%であったが、2012年は41.3%、2016年は38.9%になっている。その理由には、公営はコスト高という観念があるのか、公営は障害児保育が多いこともあるが、何よりも民間は保育士の勤続年数が短く、給料が低いということだ。    そこで今一度、公営の特徴や意義を考えてみたい。①多様な子ども(障害、虐待など)を受け止める、②年度途中の入園を考えて4月で満杯にしない、③主体としての心を育てる保育(能力育成型でない)④保育の標準となり、民間園の目標となる、⑤実費徴収が安いなど。また、統廃合のデメリットとして①送迎が遠くなる、②地域との遊離をあげている。

次に、保育の中身について。保育所保育指針が2018年度改訂施行された。それによると「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、健康な心と体、道徳性・規範意識の芽生え等10項目。その中の「自立心」では、「・・・しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げる・・・」大人でもそんなことはできないのでは?「育ちなさい」「育てなさい」と国が指示。そして幼いときからの評価が求められているが、評価されるからやるということになると自己判断力の育ちが損なわれる。就学前は個人差が大きい。子どもたちがやりたいことに集中して主体的に行動できることが大切ではないのか。

最後に、保育所保育は労働者保護の水準で決まるということ。1日8時間制及び週40時間制の完全実施とともに、育児休業や看護休暇(就学前5日/年、スウェーデンは12歳まで60日/年、オランダでは週4日勤務で週3日保育所利用が多い)を充実させること。労働者保護が進めば、0歳児・延長・休日・病児保育の必要性は低下するというのは、「眼からうろこ」であった。当面の要求に基づく運動と、より根本的な改革のための運動との関係性や相違なども考えていく必要性を感じた。

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