自然環境、住環境を破壊するメガソーラーは要らない

投稿者: | 2021年10月19日

9.18 「共生と自治をともに創っていくために 森と水は命をつなぐ ~山添・平群のメガソーラーを考える~」集会

今、平群町と山添村で、メガソーラー建設反対運動が起こっています。「脱炭素」「脱原発依存」という社会的要請を背景に、再生可能エネルギーの普及に対する期待が高まっています。それなのになぜ再生可能エネルギーを発電するのに反対するのか、何が問題なのかを確かめに、9月18日開催された集会に参加しました。

 集会は、山添村、平群町の住民運動の方、生駒市で再生可能エネルギーを発電されている方の報告があり、その後2人の方の応援演説がありました。

1. 最初に、山添村の「馬尻山のメガソーラーに反対する会」の共同代表の方から報告がありました。

馬尻山は集落の中央部に位置し、標高400m~500mの森林地帯で、自然豊かな水源涵養の森。2019年7月に馬尻山でのメガソーラー開発計画が明らかになった。地域住民は、住環境に与える影響を危惧し、直下流の4ヶ大字で「馬尻山のメガソーラーに反対する会」を結成し、反対署名活動や村役場に対して事業反対の要望活動を進めています。

 メガソーラーの概要は、地区面積81ha(うち山林60.7ha、他は原野、荒廃農地)で、事業者所有地の他に、区共有地、個人所有地が含まれています。事業者はまだ10数haを取得していません。ここは30数年前のゴルフ場計画地でした。発電量は50メガワット。事業主体は資本金1万円の合同会社「山・添」だが、実質的な事業者は株式会社Kエナジーだそうです。

 地元住民が反対している理由は、①計画地は公共水道の水源指定地で、地元はこの谷水を飲んでいる。  ②大規模森林伐採に伴う災害のリスク。山を切り崩し、谷を埋め立て、30mもの高盛土が計画されている。③豊かな自然環境が失われる。ここには絶滅危惧のクマタカも生息しており、大規模な開発は貴重な動植物の生息環境を消失させる。安全に暮らせる環境、豊かな自然環境、豊富で途切れることのない自然水を守ることは、今を生きる人間の責務だと話されました。

 2019年7月に村役場からメガソーラーの事業説明を受けた4ヶ大字は反対の意思を確認し、村長への要望書の提出、反対署名の提出、村議会全会一致の反対決議、水道水源保護審議会の開催等を行った。署名は山添村民3200人中、2200筆も集まっている。しかし、開発事前協議書は2019年8月には村から県に提出され、同年10月に県から事業者に回答されているとのことです。

当初、議員全員が反対していたが、事業者側の攻勢、村内の事業推進者の動向もあり、そうではなくなった。また、事業者は、あろうことか、共同代表の自宅の横に事務所を構え、10日に1回は事業推進のビラを配布しているとのことです。

この9月の村長選挙、村議会議員選挙により、新村長、新議員が選出されたが、開発反対で一緒に頑張ってほしい。森林や自然水は地域の宝。将来に引き継ぐ財産として守らねばならないと呼び掛けられました。

個別の開発許可申請は技術基準さえ満たしていればスイスイと進み、許可されるもののようです。止めることはできません。以前のような「地元同意書」の重みも規制緩和で軽くなってしまいました。メガソーラー等、巨大な広大な再生可能エネルギー施設の開発については、かつてゴルフ場開発を規制したような独自の条例等が必要だと思います。

 30数年前、村本建設の関連会社がここの土地でゴルフ場を開発しようとしていました。地元では、農薬で水道水源が汚染される等として、ゴルフ場開発の反対運動をしました。そして村本建設の倒産によりこのゴルフ場開発は頓挫しました。当時、村本建設の関連会社は吉野町、高取町でもゴルフ場開発を行っていましたが、それらも頓挫しました。その後、吉野町、高取町とも計画地を取得して一応の決着をみました。しかし、山添村の土地は民有地のままだったようです。広大な土地が未利用のまま放置されることはもったいない、有効利用をしたいというのは当然のことと思いますが、そこをFIT(固定価格買取制度)を利用した金儲けの舞台にされてしまったようです。30数年経って再び争いの種になるとは…。

 自然に優しいエネルギーだからと言って、自然を壊し、水を汚して人が住めなくするのは、本末転倒、あってはならないことと思いました。

2. 次に、平群町「平群のメガソーラーを考える会」世話人代表から特別報告がありました。

 住宅地の上の里山の森林が伐採されて自然が壊され、住宅地には土石流が直撃する危険性がある。通行している町道に22000ボルトの高圧電流が流れる電線が埋設されると知って、2020年1月「平群のメガソーラーを考える会」を結成し、宣伝署名活動をしてきた。

メガソーラーの概要は、地区面積48ha、事業者は転々と変わり、今は資本金10万円の協栄ソーラーステーション合同会社だが、実質的な事業者は外資のエバーストリームキャピタルマネジメントだ。県の林地開発許可(2019年11月)を得て工事に着手し、木々を伐採し掘削工事をした。しかし、今年6月、林地開発許可申請の中に虚偽があったとして、県は工事の停止を命令した。工事は停止したが、現状は調整池がなく、大雨が降れば危険な状況であると話されました。

 開発申請には1自治会の同意だけで開発が許可され、住民説明会は開発許可後の2019年12月に行われた。2020年1月「平群のメガソーラーを考える会」を結成し、宣伝署名活動をしてきた。2021年3月には1000人による建設差し止め訴訟を行っている。

無謀な森林開発から故郷を守ろうと次の取り組みをしていると話されました。

①開発許可の取り消し、②裁判で工事の中止を勝ち取る、③省エネ・再エネを住民参加で進めよう、④奈良県、全国の活動と力を合わせ、関係法令の見直し、県条例の制定を求める。

開発許可申請の虚偽をなぜ県が見抜けなかったのか。住民団体がなぜ見つけることができたのか。県の審査能力はどうなってしまったのでしょうか。メガソーラー建設はFIT(固定価格買取制度)認定により高利回りの投機事業のようです。

3. 生駒市「市民エネルギー生駒」の代表理事の方の報告がありました。

 「市民エネルギー生駒」は、再生可能エネルギー源導入・省エネルギーの実践、社会変革提案など、環境問題全般の解決に資する事業を行うことを目的に2013年に設立された。環境に優しく安全性の高い再生可能エネルギーの普及と地域のエネルギーによる収益を地域に還元し地域の活性化を生み出すことを目的として活動している。生駒市の土地建物を利用して発電し、地域連携で地域電力の「いこま市民パワー」を通じて生駒市民に自然エネルギーを提供している。生駒市の土地建物を利用しているので、生駒市に固定資産税を払い、出資した人に2%の配当を行い、また、市民に利益を還元して寄付行為も行っている。

 こうした地域への貢献活動が徐々に認められて、環境省の「環境大臣賞」、経済産業省の「省エネ大賞」を受賞した。明るく楽しく愉快に活動する。自らがつくっていく。できることから進めていくと話されました。

 最後に、主催者は集会のまとめとして、奈良県に納得できる再エネ条例(推進と乱開発防止)をつくっていこうと呼びかけられました。既に兵庫、和歌山、岡山の3県と146市町村で規制条例があるようです。

 この8月に、自治体研究社が「再生可能エネルギーと環境問題 ためされる地域の力」を出版しました。FITの問題点、再生可能エネルギーの環境問題が分かりやすく説明されています。そして、再生可能エネルギーの開発が、自然環境との調和を図りつつ、地域社会の利益につながるように進められるために、地域の側に主体的な力が育つ必要性が説かれています。ぜひお読みください。                          (文責 城)

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