地域の宝は私たちの誇り、埋蔵文化財博物館の提案

投稿者: | 2021年10月19日

川本 雅樹(副理事長、御所市会議員)

私の住む御所市には多くの豊かな古代の歴史・文化がありますが、とりわけ遺跡群、古墳群に素晴らしいものがあります。これらは地域の宝であり、ここに住む私たちの誇りです。しかしながら、これらが十分に活かされているとは言い難い状況にあります。他所から訪れる方々がこれらを見て、私たちと感動を分かちあえたい、私たちが誇りをもってここに住みたいと考え、2021年9月御所市議会において質問をしました。質問の概要は次のとおりです。

1点目は、文化財行政についてです。2021年度から2029年度の10年間を計画期間とする「御所市第6次総合計画」には大きく7つのテーマが定められています。その中の一つに「貴重な地域資源である『自然』『歴史・文化』を活かしたまちづくり」が掲げられています。そして、その政策方針・目指すまちの姿として、①貴重な歴史・文化資源を守り、その魅力を積極的に発信するまちをめざす、②歴史・文化資源や伝統文化を次世代へ継承し、地域への愛着を育むまちをめざす、としています。ところが、それを実現する具体的な施策・取り組みとしては、「御所まち」の歴史的なまちなみを保存するため、重要伝統的建造物群保存地区選定に向けた住民意識の高揚を図るとあるものの、その他の具体的な施策や取り組みは全く示されていません。

ちなみに、今から10年前の2011年10月に策定された「御所市第5次総合計画」や2012年3月に御所市教育委員会が定めた「秋津地区史跡整備基本計画」では、宮山古墳、巨勢山古墳群、條ウル神古墳およびその周辺を整備し、自然景観の保全、良好な農地の保全を行いながら、歴史を感じるレクリエーションの場としての利用を図るとしています。また、市内に所在する考古・歴史資料を集め、歴史学習の場となる歴史資料館(埋蔵文化財センター併設)を推進するとしていますが、これがどうなったのか、計画は中止になったのかどうか、お示しください。

さて、御所市には多くの豊かな古代の歴史・文化がありますが、中でも5世紀に栄えた葛城氏の巨大集落跡が南郷遺跡群です。現在の大字でいうと、御所市南郷・佐田・井戸・下茶屋・多田・極楽寺・林にあたります。ここで葛城の王はまつりごとを行い、その傘下にあった渡来人技術者と一般住民に手工業生産を行わせていたことが明らかになっています。前述の宮山古墳は全長238mの巨大な前方後円墳ですが、この地に君臨した王、葛城ソツヒコの墓と言われています。また、その背後の巨勢山には奈良県でも最多の総数600基という多くの古墳が5世紀から6世紀の間に築かれました。巨勢山古墳群です。さらに、南郷遺跡群の北側の名柄遺跡からは石垣をもつ宅地と大型の竪穴住居が検出され、葛城氏の居館跡と推定されています。極めつけは2004年度の調査で確認された極楽寺ヒビキ遺跡の大型建物、石垣、堀などの遺構で、王の「高殿」と考えられています。その他の導水施設や首長や親方層、一般住民のそれぞれの居住地など、南郷遺跡は、この時期における日本列島最大規模の集落遺跡であることが判明しました。

そこで、提案があります。御所市のメインの埋蔵文化財博物館を南郷あるいはその周辺に建設し、再び地域の歴史に光をあて、過疎に苦しむ現状を打開できないかということです。そして、いったんは「御所市第5次総合計画」の中で秋津地区に歴史資料館建設を計画されたことも踏まえて、そこには宮山古墳と巨勢山古墳群、條ウル神古墳をメインにした資料館を計画する、そして、南郷遺跡も含めた御所市全体の古代文化財の収蔵・展示はこの新しく提案した場所で、もう少しいうならば、大和盆地を見渡せる景色のよい場所で、しかも大型バスが容易に入ってこられるように、山麓線(県道)に隣接またはアクセスのしやすい場所が適切ではないかと考えますが、市長のお考えをお聞かせください。

さて、もう少し埋蔵文化財博物館のイメージを描きたいと思います。一般的に博物館の機能としては、収蔵庫スペース、調査・作業スペース、展示スペース、講演スペースが必要ですが、当該建物もこの4つの機能を満たす必要があります。デザインも周辺の金剛山の集落風景に溶け込むような特徴のある優れたデザインにするために、全国に発信してイメージコンペを実施してもいいのではないか、日本の古代文化発祥の地における埋蔵文化財博物館となれば、応募してくる建築家もいると思います。そして、最優秀計画に選ばれた設計者に基本設計・実施設計を依頼するというものです。こういう過程を通じて御所をラグビー以外でも全国にアピールすることができるし、担当する市職員も鍛えられるし、将来にわたって夢のある仕事になると思います。また、過疎に苦しむ御所市や関連地域にとっても自らの歴史に誇りを持ち、再び地域の良さを見直すことにつながると思います。さらに管理運営の一部や案内ガイドを地元の人が担うことも可能です。効果的な宣伝をすれば、御所の観光の新しいスポットとして多くの観光バスがやってくることも夢ではないと思います。

最後に費用について考えたいと思います。全体の面積をどれくらいにするか、の議論が必要ですが、ちなみに「秋津地区史跡整備基本計画」で考えられていた歴史資料館の大きさや費用はどれくらいを想定されていたでしょうか、お示しください。私の提案は、前述のように、そこは秋津地区の文化財に特化するとして、その他の全体的な文化財を保管、調査、展示、講演する機能を満たす空間として仮に延床面積を4000㎡、1㎡あたりの価格を市民防災センターの㎡単価である54万円とすれば、21億6千万円が必要となります。それに、設計費・工事管理費に1億8千万円、造成費と外構費に2億円を計上すると、25億4千万円になります。この数字が妥当かどうかはもっと議論・検証する必要があると思いますが、ひとつのたたき台としてお聞きいただければ、と思います。そして、この費用を捻出するために、事業費の100%を充当可能で、後年度に70%の交付税措置がある過疎債を使用することが有効だと思いますが、市長はどのようにお考えでしょうか。

人員増も含めて、御所市にとって文化財行政に一層力を入れることは、決して無駄でも過大でもありません。少し長い目でみて、成熟した社会における御所市の今後の発展方向として最も重視すべき御所らしい施策と考えますが、いかがでしょうか。

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