11月24日、日本医労連、中央社会保障推進協議会、自治労連が主催する全国交流集会が行われました。これにオンラインで参加しようと、奈良社保協と共催して奈良会場(大和郡山市市民交流館)を設け、集団で視聴しました。6名が参加しました。

新・地域医療構想と加速する病床削減 ~医療体制の危機を考える
長友薫輝さん(佛教大学社会福祉学部准教授)が講演をされました。社会福祉学部は仏教系やキリスト教系の私立大学及び地方の公立大学の一部にあるのみで、国公立大学にはないと、先ず、人間の幸福を追求していく、もの申す社会福祉学の立ち位置を話されました。
講演の主な内容と検討課題は、①医療政策の動向を共有する、②人口減少、労働力人口の減少で医療も縮小するのか、そこに根拠はあるのか、需要は減るのか、③医療政策の充実で住み続けられる地域づくりに向けてです。
自民・公明・維新が合意 医療費4兆円の削減、保険料負担引き下げをめぐって
自治体病院の9割が赤字、全国の大学病院も7割が赤字、病院維持が困難な状況の中、2025年2月25日、自公維が国民医療費4兆円削減(医療費総額48兆円の1割弱)で合意した。維新は、これにより現役世代の社会保険料負担を6万円引き下げるとしている。その方法は。①医療介護の生産性革命(市場原理を働かせてサービス向上、コスト減、人件費の適正化、医療DXの推進、大胆な規制改革)、②持続可能な水準の応能負担(高齢者の負担増、民間保険のように医療を利用しない人には保険料を下げる、税・保険料・給付の一元管理)としている。要は、低賃金でもっと働け、生活にゆとりのある高齢者はもっと負担しろということ。 社会保険は「第2の税」である。「増税と言えば選挙に負ける」ので、国は国庫負担を減らして社会保険料をずっと上げてきた。新設される「子ども子育て支援金」の原資は不合理にも医療保険料だ。国保をはじめとする皆保険体制の充実を図るには、国庫負担の増額が必要。
社会保障の基本 応能負担とは何か
憲法14条による法の下の平等は、税、社会保険料負担において、応能負担の徹底を通じて行わなければならない。経済力が同等の人には等しく負担を求める水平的公平と、経済力のある人により大きく応分の負担を求める垂直的公平があるが、垂直的公平は応能負担の徹底によって実現される。負担能力は勤労所得と資産所得とでは担税力が異なるため、よく中身を吟味して応能負担とする必要がある。応能負担を原則とすることで健全な社会を志向することができる。
病床11万床削減、OTC類似薬の保険外し…
6月11日、自公維が全国の病床11万床(一般・療養56千床、精神53千床)を減らす、OTC類似薬の保険外し、医療DX、現役世代に負担が偏りがちな構造の見直しによる応能負担の徹底等で合意した。他に、高額療養費の見直し、尊厳死法制化等による医療費抑制の動きもある。これらは、庶民に分断と対立をつくりだして、本質から目を逸らさせるポリュリズム的政治手法だ。
新自由主義的改革の特徴
①社会保障費抑制・削減を図る
②医療・介護の規制緩和で市場化、産業化、商品化を図る
③市場原理でサービスの質向上、コスト削減を図る
④医療介護のデジタル化で市場化、産業化、商品化を図る 医療DXの推進自体が費用削減ではなく市場拡大の機会
⑤個人の利益と負担の見える化、民間保険と変わらない設定
⑥現役世代と高齢期世代の分断・対立を設定
⑦結果的に市民から搾取・収奪を図る 階層の固定化・安定化
⑧「持続可能性」をマジックワードとして多様 「持続可能性」=縮小化
長友先生は、軍事費増大、それも攻撃能力強化の動きを説明し、次ぎに1980年代から続く公的医療費抑制政策の展開、そして医療から介護、介護から地域・自治体への流れを説明した後、地域医療構想の話に入られました。
地域医療構想 2025年病床数削減は超過達成
地域医療構想は、2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計し、2016年度中にすべての都道府県で定められた計画で、地域ごとに病床数を管理するもの。現在、病床削減は超過達成している。
国は新たな地域医療構想の策定作業に入る
①2040年に向け、外来・在宅、介護との連携、人材確保等も含めたあるべき医療提供体制の実現に資するよう策定・推進する。(将来のビジョン等、病床だけでなく医療機関機能に着目した機能分化・連携等)
②新たな構想は27年度から順次開始する。25年度に国でガイドラインを作成し、26年度に都道府県で体制全体の方向性や必要病床数の推計等を行い、28年度までに医療機関機能に着目した協議等を行う。
③新たな構想を医療計画の上位概念に位置づけ、医療計画は新たな構想に即して具体的な取組を進めるとしている。
地域の意見を聞かないと構想が策定できない ここが運動のポイント!
緊急支援パッケージによる病床削減の加速 病床数適正化支援事業
2025年度から、削減した病床1床につき410万4000円の財政的支援を受けることができる事業を実施した。財政的なインセンティブを与えることで、医療機関の経営のみの判断で病床削減が過剰に行われることになってしまう。意向調査では、全国で5万3716床が削減支援を希望し、現在1万1274床が内示を受けている。
「医療は供給が需要を決定する」というのが大原則
将来の人口減少を見込んで病床を縮小する、需要を見込んで供給を決定するということでは、地方では人は住めない。教育も交通も同じことだが、「医療は供給が需要を決定する」というのが大原則。供給拠点の整備こそが必要。①住民にとってアクセスしやすい病院や診療所がある。②身近に医療機関がなければ、需要は潜在化する。受診しなくなる。③そして、何より重症化する。軽症段階でいかに医療にアクセスできるようにするかがポイントだ。
2次医療圏の見直しも進む 「保険あって給付なし」
秋田県では、8医療圏が3医療圏へと再編統合が進んでいる。これにより、病院の再編統合等が進み、住み続けることができない地域を増やすことにつながった。「供給なければ住めない」、「医療差別」だと地元の人は怒っている。国保の都道府県単位化によって、同じ都道府県内は統一の保険料率へと向かっている。大阪府と奈良県は統一なった。「保険あって給付なし」の事態が進んでしまう。
保健・医療・介護・社会福祉は地域経済、地域雇用の拠点 国、自治体に必要な視点
地方において医療・介護・社会福祉は地域経済、そして地域の雇用の拠点という視点が欠かせない。社会保障は地域の重要な産業の一つ。雇用の面での貢献も大きい。公共事業よりも大きい。
公的医療費抑制策を転換へ
医療を受給できる権利、健康権が保障され実感できる社会づくりを志向する 医療崩壊の主因である公的医療費抑制策の転換、公衆衛生機能の強化 病床削減を急ぐのではなく、医療現場、介護現場の改善が喫緊の課題 縮小一辺倒ではなく、地域づくりの一環として地域医療構想と地域包括ケアシステムを位置づける 地域医療構想をはじめとする行政計画等の医療政策は、少子高齢化、人口減少社会だから医療需要の減少を見込むのが当然だと考えているが、このままだと医療も地域も縮小再生産になると話されて講演を終えられました。
長友先生の講演の後、基調報告、特別報告、地域医療を守る各地の運動報告がありました。
・新潟県で赤字を理由に地域医療を縮小しようとする動きに対して、「医師不足対策・地域医療を守る実行委員会」を発足させ、全県オンライン学習、県への要請、自治体訪問を始めている。近々記者会見して県民に知らせる予定。
・岸和田市民病院を地方独立法人化する動きに対して、「市民病院を充実する会」を結成し、独法化の学習会、ビラ配布、駅頭宣伝、市長への懇談申し入れ、医師会・町会への働きかけを行った。市長選挙を戦い勝利し、独法化は阻止した。しかし、依然として予断を許さない情勢であり、運動を続けている。
・舞鶴市には4病院あるが、それを2病院に再編しようとしている。一方、舞鶴基地にトマホークミサイルが配備されようとしている。必要なのは、「軍事費を削って暮らしと福祉・教育の充実に」だ。
・国立病院機構の積立金422億円が国庫に返納され、軍事費に回された。ボーナスカット、ベースアップなしで、人が来ない。国立病院を守れの運動をしている。
・県の病床削減計画を知ろうと情報開示請求したら、真っ黒なペーパーが返ってきた。各府県でどのような計画をしているのか、開示請求して調べることが大切。
・病院の再編で賃金労働条件が低い方に合わされたところもあれば、高い方を勝ち取ったところもある。再編の動きがある病院労働組合は組織が違ってもよく交流し、話し合うべきだ。
・石川県能登には4病院があるが、能登空港(1日1便)近くに急性期病院をつくり、現4病院をサテライト化しようとしている。
・オンライン受診施設の取り扱いがおかしい。設置後の申請でOKだと。惨事便乗型の施設もある。
(文責 城)