能登半島地震合同研究シンポジウム
9月29日午後、標記シンポジウムが開催されました。自治体問題研究所と自治労連・地方自治問題研究機構が主催したシンポで、Zoomで参加しました。その一部を紹介します。
復興計画に集約化を持ち込まない、生活・生業の再建最優先、集落単位での再建を
最初に、中山徹氏(自治体問題研究所理事長、奈良女子大学名誉教授)が主催者あいさつ、基調報告をされました。
今年6月、能登半島地震合同研究会を二者で結成した。研究結果をまとめ、2024年度末までに出版する予定。このシンポで研究成果の中間発表を行い、能登半島地震の復興計画が立案されているが、復興を巡って何が問題になっているのかを広くアピールするのがこのシンポの趣旨と説明されました。
次に、地震の概要、被害の状況の説明後、現地で何が起こっているのか、①人口の著しい減少 2市2町で▲6.1%、▲3542人の減少。②児童数(小学生)の著しい減少 2市2町で▲29.1%、▲484人の減少。輪島市では▲42.5%もの減少となっている。
復興計画について、市町は、復旧期で生活・生業の復旧、これを通じて人口の流出を防ぎ、外に出た人が安心して戻れるようにする。さらに復旧を進めて震災前のレベルに戻す。そして新たな価値を創造しようと、概ね市町は計画しているようだ。
しかし、政府は復興を通じた過疎地の集約化を考えている。また、石川県は創造的復興として県内での集約化を計画している。具体的には、金沢市などの都市部に生活の拠点を置き、週末は地方部で暮らすという二地域居住だ。これは人口減少を前提にした計画だ。
復興計画に必要なことは、①集約化を持ち込まない、②希望する人が地域で暮らし、地域に戻り、生活が成り立つようにすべき、③集落単位での再建計画を基礎にすべきである。市町は、できる限り住民参加を進め、情報を公開すべきであり、集落単位での復興計画策定を引き続き進めるべきだ。石川県は、市町計画を受けて創造的復興プランを見直すべきである。
地震に豪雨災害 ようやく一歩一歩進み出した中、精神的ダメージが大きい
次に、泉谷満寿裕氏(珠洲市長)が被災地自治体首長として報告されました。
9月21日の豪雨災害は甚大な被害をもたらした。土砂流木が住宅地、農地を埋め尽くした。振り出しに戻るより、一層苛酷になっている。農地はやっと6割ほど植え付けできたのに、収穫直前の水害でコメの収穫は見込めなくなった。道路は寸断された。上水道はようやく外浦まで復旧できたが、豪雨災害により再び断水した。水源地も土砂で埋め尽くされた所がある。住宅も完成した所が床上浸水した所もある。復旧復興に向けて更なる努力が必要だ。ライフラインを強化しないと安心して暮らせる地域にならない。
復旧復興計画は里山里海をベースに、これまでの取り組みを継続的に発展させようと、復興の光にしたい。
珠洲市は10地区があり、津波で大被害を受けた地区、地盤沈下した地区等があり、それぞれの地区で被害が異なっている。コミュニティをどう再生するか地区で話し合ってもらう。集約化は考えていない。解体撤去も2年ぐらいのスピード感で進めているが、倒壊している姿を見るのも辛いが、解体撤去されて草ぼうぼうの更地を見るのも辛い。めげずに取り組んでいきたいと話されました。
シンポジウムは、岡田知弘氏(京都橘大学教授)がコーディネーターを務め、「地域経済」を小山大介氏(京都橘大学准教授)、「財政」を桒田但馬氏(立命館大学教授)、「原発」を立石雅昭氏(新潟大学名誉教授)、「復興方向」を武田公子氏(金沢大学教授)が担当されました。
先ず、岡田知弘氏が次のように話されました。
2月より4回被災地を訪問した。150km活断層が連続して動いた地震の激甚性に驚いた。地盤が2~4m隆起した。石川だけでなく、新潟、富山、福井も大きな被害が出た。地形が異なるので災害の形が異なった。原発のリスクも大きい。地震発生確率の高い地域ではなかったので、計画もなかった。地震が過疎化高齢化の地域を襲った。過疎化の地域への資金の投下は無駄ではないかの意見が出ている。万博より能登の復旧への声が潰されている。
補助金申請の手続きの簡素化、効率化を
小山大介氏は、小規模事業者持続化補助金、なりわい再建支援補助金の申請、採択とも極めて低調で、書類の審査は金沢市で行われており、必要な相見積もりを取ることも困難となっている。また、復興計画は、大手コンサルを中心とした計画立案で、地元事業者、住民の参画が少ないと話されました。
使えない「なりわい再建支援補助金」
桒田但馬氏は、東日本大震災のグループ補助金の成果と問題点を検討したうえで、能登半島地震時のなりわい再建支援補助金を評価。補助率・額も高い公的支援であるものの、申請させない(できない)側面が強く表れていると話されました。
原発の安全性にかかる最大の教訓―複合災害時、周辺住民の命を守れない
立石雅昭氏は、志賀原発の避難計画では、志賀町の8,211人は能登町へ、七尾市の6,415人も能登町へ、穴水町の8,169人は珠洲市へ、輪島市の6,277人は同市の北東部への避難と計画されている。また、地震により原発の北部にある多くの放射能測定装置は欠測してしまった。これで住民は安全に避難できるのか。日本海における断層による地震動は確率分布図には反映されていなかった。
内陸で地震を引き起こしうる活断層の分布は、調査解析され明らかにされてきた。重要な点は、これらの活断層が連動して巨大な地震を引き起こすか否かである。志賀原発の敷地近傍にも断層があり、今回の地震で地滑りや亀裂が確認されているが、調査されていないと話されました。
集落の再生は能登復興の要
武田公子氏は、住民の避難状況、住まいの確保等を説明した後、コンパクト化・集約論を巡って、①分散的な集落が能登各地の里山里海を保全・活用してきた。②能登の自然・景観・生物多様性はこうした集落コミュニティの営みと不可分である。③各地の集落の再生・維持なしには能登の復興はありえないとして、コンパクト化・集約論を批判しました。
Build Back Betterの能登モデルとは、①自然環境と密接に結びついた「なりわい」②里山里海とともにある「くらし」、③集落のレリジエンスだと話されました。
4人のパネラーの後、会場から3名の方が発言されました。
戸村健作氏(千葉商科大学教授)は、自治体職員のアンケート結果から、長時間労働の実態、人員に余裕のある自治体はない、全国からの派遣に対しての感謝、職員の増員、超勤管理を要求する声を報告されました。
西村茂氏(金沢大学名誉教授)は、災害対応の教訓は「平時の脆弱性が災害時に増幅される」、平時の取り組みの延長が基本となり、自治体が人材や経験を蓄えていることが初動対応の混乱を少なくする。大災害発生直後は、職員が被災して初動体制が遅れる可能性と必要な緊急の移動確保対策を前提に防災を計画する必要がある。多様なアクセス手段(空輸、ドローン等)の確保。そもそも孤立しやすい地域、指定避難所までたどり着けない地域に、多数の小さな避難所・分散した備蓄の確保が必要と話されました。
窪田亜矢氏(東北大学大学院教授)は、復興の主体者は被災者、被災直前までの暮らしをどうつくれるか。どうやったら被災者がその気になれるのかを考える。戻って住むことが悪いと思わせる雰囲気、補助金申請でも書類が多すぎる。被災地が忘れ去られないよう、連帯を。
この後、各パネラーが議論されました。
・ 現状生活再建できていない。生業再建もできない。申請が難雑で、やる気が出ない。復興計画策定を急がされ、意見集約できない。何が地域に必要なのか議論されない。安全保障、自衛隊増強、ミサイルの話も出てきている。万博建設で能登に業者がいない。
・各省庁のやりたいことが計画に入っている。国防と復興、惨事便乗型だ。・ 自己責任が貫かれている。
・ 地方自治法の改定で、危機対応における国の権限が強化された。プッシュ型支援の根拠となり得るのならいいが、本来補完性を旨とすべきもの。国の指示待ちのような状況もあるが、自治体の危機対応能力の強化が先決だ。
・ アメリカのFEMAのような災害対応の専門家が必要だ。日本はその時の思いつきの対応であり、経験が生かされない。自治体の脆弱化、国がやってくれたら‥の声に乗じて国が指示する方向になってきているが、コロナ対応を見ても国にはできない。 過疎だから金を投下するのはもったいないと言っているが、都市直下ならどうするのか。政府の対応順位は、第一に首都機能の維持、二番目に人命救助だ。
・ 国は、軍事、国家の維持を最優先にして復興しようとしている。
・ 生業とコミュニティ再建を集落から考える。専門家、支持者に協力を求めてほしい、いつでもお手伝いをする。
・ 半壊未満にも援助が必要。
・ 珠洲市高屋区の円龍寺住職は珠洲原発反対の中心メンバーだった人。真宗大谷派は戦争に協力したことを深く反省したことを踏まえ、住職は原発について賛成したらどうなるのか、原発ができたら子孫にどう責任とれるのかを考えて原発建設に反対した。この地震で、二次避難先として山代温泉に避難したが、温泉客を入れるので出て行ってくれと言われたと話していた。
・ 今までの災害の課題が今回も出ている。自治労連として8次のボランティアを行っているが、1月と5月で現地は何も変わっていないとの報告がある。住民が置き去りにされているのではないか。住民の命と暮らしが守られるよう、それぞれの分野、立場で頑張ろう。
たくさんの大切な発言がありましたが、その一部だけ紹介しました。(文責 城)