第66回自治体学校in神奈川に参加して

投稿者: | 2024年8月24日

清家 康男(弁護士)

1  第66回自治体学校in神奈川が7月20日(土)、21日(日)に神奈川県横浜市で開催されました。これまでの自治体学校は3日間にわたって開かれていましたが、今年から2日間開催となっています。

2 20日の全体会は鶴見公会堂で開かれ、中山徹自治体問題研究所理事長の基調講演、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんの特別講演と3本のリレートークで構成されています。

(1)  中山先生の基調講演「今こそ自治と公共性の再生を」は、まず、2015年の安保法制の制定以来、着々と進められている基地の再編強化や軍拡が、沖縄に典型的に見られるように地域から平和や安全が奪われる事態に立ち至っていること、年初の能登半島大地震の被害が大きかったのは住宅の耐震改修が個人責任とされるなどインフラ耐震化が一向に進んでいないこと、市町村合併により公務員の絶対数が減らされ、災害への対応力が低下していること、震災からの復興も相変わらず「創造的復興」という名の下で集約化が考えられているがこれでは地域つぶしにしかならないこと、政府のデジタル田園都市国家構想総合戦略で自治体を総動員して市民生活、地域のデジタル化を進めようとしているが、自治体の独自施策が否定され、大事業を通じて公務の民間大企業への開放が目論まれていること、国民の賃金が一向に上がらず個人消費が低迷しているが、個人消費は日本経済の50%以上を占めているので、これでは地域経済の活性化が困難であることなど、政治経済の現状の種々の問題点が示されました。 

そしてその上で、地域の平和と安全、市民生活の向上、地域経済の活性化を進めるためには国と自治体が両輪とならなければならないが、国がそのような立場に立たないので、自治体は国の政策から地域と市民を守る政策を展開すべきこと、そのためには市民生活を支える基本的な計画は行政が立案し、責任をもたなければならず、例えば福祉分野においてケアプランの作成は公費で行うべきであるし、公営住宅の整備や生活保護の権利性の強調もなされなければならないこと、教育分野においては社会教育も含めて教育の自主性を守るために行政からの独立を確保し行政は条件整備に努めるべきこと、地域経済においては社会保障の経済効果を重視し、経済を循環型にして生活の場で雇用を産むよう努めること、まちづくりでは日常生活圏(ほぼ小学校区)を単位として公共施設や公共交通を整備することを訴えました。そのためには地域政治が変わらなければなりませんが、昨年、一昨年の杉並区議会選、杉並区長選を例に女性と若者が投票所に足を向けるようにする必要があることを訴えました。

(2)  安田菜津紀さんの特別講演「紛争地、被災地に生きる人々の声-取材から見えてきたこと」は、安田さんが取材した先で撮影した様々な写真を映しながらの講演で、パレスチナ市民が自らの苦境にも関わらず東日本大震災の復興を祈念する催しをしていることや、東日本大震災の被災者で仮設住宅にお住まいの方が内戦下のシリア難民に対する衣服支援を行っているなどの市民間の国際的な相互援助の連鎖(「恩送り」)の話が印象的でした。

(3) リレートークの1本目は自治労連埼玉県本部による「公共を取り戻す取組」で、①吉見町が隣町の政策を何の検証もせずに丸写しで学校給食センター調理業務の民間委託を進めたことに対し委託中止にはあと一歩及ばなかったものの希望者の雇用及び労働条件を確保できたこと、②狭山市の会計年度任用職員図書館司書の雇い止めに関し、職場復帰までには至っていないものの会計年度任用職員任用の運用改善を実現したこと③春日部市学童保育の指定管理者の不十分な指定管理協定の不十分な履行について、住民団体との連携により住民訴訟における判決理由中の判断で指定管理者の常勤支援員配置義務や保育の質を下げない責任を認めさせた報告がありました。

    2本目の「能登半島地震の実態と課題」では、前例のない規模の地震で前例がない被害が発生したこと、未だに水道の宅地内配管の復旧が進んでいないこと、仮設住宅は集落毎に建てられず集約型で面積も狭く地域単位で継続して住める木造型を建設して欲しいとの住民の要望に対追いできていないこと事業者不足や煩雑な手続にために被災住宅の公費解体が遅れていること、戻って暮らせる能登にするために産業の柱である農林漁業の緊急復旧が求められることが報告されました。

    3本目の横須賀火力発電所建設を考える会の報告では、新たに横須賀に建設された石炭火力発電所を巡って、様々な催しに大勢の若者も参加したことが報告されました。

3  2日目の分科会・講座は金沢八景にある横浜市立大キャンパスで開催され、私は講座「地方自治法・地方財政」に参加しました。

    午前の「地方自治のしくみと法」(岡田正則早稲田大学教授)では、議会や長について定めた憲法93条の説明の中で住民代表はあくまで議会であって、長は行政手腕によって選出されるのであり住民代表ではないことや、「地方分権改革」では何でも自治体に任せてしまい社会保障や公衆衛生など本来国の責任であるのにこれらも地方に押しつけられていること、明治から平成まで市町村合併が進められてきたが自治が成り立つ規模は次世代を育成できる小中の義務教育学校の範囲で考えるべきことなどの指摘がなされ、また今年6月の地方自治法改正による「指示権」創設は、立法過程で「指示権があったら良かった」との実例が示されないことから、実は有事を念頭に置いた規定であり、発動させないことが大事であるとの懸念が示されました。

    午後の「地方財政のしくみと課題」(川瀬憲子静岡大教授)では、日本版コンパクトシティ政策(公共施設統廃合を目的とする立地的成果政策)の下で集約型国土再編が進み、ナショナルミニマムを保障すべき地方交付税の一部に成果主義が導入されるなど(トップランナー方式)中央官庁の政策誘導が著しく財政が歪められている現状の是正が訴えられました。

4  来年の自治体学校は東京(日本教育会館)で開催される予定です。

                                                                    以上

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です