井上 昌弘(理事、奈良市議会議員)
現行の用水供給単価130円を136円に値上げ
3月6日に県域水道一体化に向けて企業団設立準備会(第3回)が行われました。その中で県域水道一体化に不参加を表明している奈良市・葛城市のみ県水の受水料金を現行の130円を136円に値上げする案が決定されました。正式決定は設立される企業団議会の場で行われると思いますが、法定協議会の場で決まったことは重大です。
県水はいわば水の卸売の役目を果たしており、買い手は末端給水を担う市町村です。奈良市は9割が自己水、残りの1割は県水ですが、それでも大口利用者として県から毎年7億円程度受水しています。今回の値上げは率にして5%、年間3千万円の大幅値上げで奈良市の給水コストの引き上げ要因となります。
今回の値上げ案の3つの問題点
第1に、現在の県水の卸売価格はもともと全国的にみても高単価だということです。平成24年度の県の包括外部監査からも1立方メートル140円というのは全国で3番目に高いと指摘されています。この指摘を受けて翌年度から130円に引き下げ、さらに県水の利用を増やせば90円にまで下げることにより自己水源から県水への転換を誘導しました。しかし、この2段階従量制を採用したことへのまともな評価もなく、全国屈指の高単価であるのに2市狙い打ちで引き上げるのは問題があり、少なくとも現行維持が当然です。
第2に、値上げ提案に関わる手続の問題です。今回の値上げ案は事前に県から奈良市、葛城市に対し何の相談もありませんでした。これまで用水単価料金改定の際には「奈良県営水道受水協議会」という場での協議を経て決めていましたが、今回そのような手続きは取られていません。
第3に、2019年1月に「新県域水道ビジョン」を策定する際に県が行ったパブリックコメントに対する県の回答内容にも反します。「協議会に参加しない自治体に対しペナルティを科す事のないように」との意見に対し、県は「各市町村において、個々の状況を見て協議会の参加を御判断いただくものであり、参加するしないによってペナルティを科すことはありません」と明確に回答しています。一体化参加団体については統一料金よりも現行料金が高ければ値下げの対応、現行料金のほうが統一料金よりも安いところは据え置きです。不参加団体のみ用水供給単価を値上げするというのではペナルティそのものです。
企業団への「途中参加」の項目が新たに付け加えられた
今回は言わば、水の卸売価格の値上げであり、奈良市がこれをそのまま水道料金に反映させるかどうかは未定です。しかし警戒はしておかなくてはなりません。県域水道一体化がすでに行われた香川県では、一体化協議の過程で、不参加の意向を示していた坂出市・善通寺市に対し、参加しなければ香川用水単価1㎥68円が126円になり、水道料金が大幅に上がるというイメージ図を示しました。これが決定打となり、最終的には全自治体を参加させる強引な手法がとられました。
奈良県広域水道企業団に不参加を表明した奈良市、葛城市を念頭に、第3回法定協議会で配布された資料には「当初不参加団体の途中参加」の項目が入っています。その具体化のために「首長による部会を設けて詳細を検討する」とまで言及しています。
これまで荒井前知事は企業団への途中参加は認めないと言っていましたが、方針転換してでも奈良市・葛城市を参加させたいとの意向がにじみ出ています。今回の2市値上げ案は、「ペナルティ」がいやなら参加を、というメッセージとも受け取れます。今後2市に対し更なるムチが用意される恐れを警戒しておかなくてはなりません
当面は値上げの根拠を明らかにさせる必要がある
第3回法定協議会資料は、値上げの根拠として、2市の費用が42億円かかり、それを奈良市葛城市の用水量で割ったら136円になったとのことです。しかしそもそも費用の内訳がなく、用水の原価も示されておらず、示されているのはこの費用総額と算定ルールや考え方のみです。これでは妥当性・合理性を検証することはできません。奈良市企業局は私の質問に対し「原価算定の合理性を確認するためには、従来の水道用水供給事業である旧県営水道事業と、末端給水である従来の旧市町村水道事業の収支が、今回の試算において適切に切り分けされているかを確認する必要がある」と答えています。
今後のためにも料金算定のきちんとしたルールづくりを
これまでは県の用水事業と市町村の給水事業とはシンプルに分けられていましたが、今後はその区分けの無い、いわば団子状態の企業団から2市は受水することになります。料金算定の根拠が不明確になりはしないか気になるところです。
下水道事業においては、市町村が県に支払っている流域下水維持管理負担金について、料金のありかたについて協定書締結などルール作りがされていないことが問題となっており、今その策定に向けての協議が行われています。この県水の料金についても、最初にキチンとした単価算定のルールや考え方を整理しておく必要があると考えます。