11月24日、大和郡山市市民交流館で「地域から築く自治と公共」学習会を行いました。講師は中山徹先生(奈良女子大学名誉教授、自治体問題研究所理事長)で、2023年1月の総会記念講演に次いで講師に来ていただきました。参加者は25名(うち会員18名)でした。
中山先生は、住民福祉の向上が自治体の役割なのにそうなっていない。地域で安全に暮らせていけるのは平和であってこそ。いつミサイルが飛んでくるということなら生活していけないと話し、地方政治は国政に大きく影響を受けるので、国政の動向から講演を始められました。

戦争できる国づくり
2015年集団的自衛権行使の容認に始まり、2022年安保3文書の改定により安保法制の実質化を図った。専守防衛から敵基地攻撃能力の保有、軍事予算を倍増していく。 また、戦争できる国にするには武器を持つだけではなく、国民の民主主義を抑え込む、戦争できる国家体制をつくることが必要。そのため、国民監視体制を強化している。
土地利用規制法 都計法、建築基準法等は地方自治体が土地規制するものたが、この法律は防衛上支障あるかどうかを監視し、内閣総理大臣が土地を規制するもの。
経済秘密保護法 何が機密に該当するか公表もせずに、公務員だけでなく民間人も調査の対象にした。国民の知る権利を奪い、もの言わぬ社会をつくる。
地方自治法の改定 国、地方自治体は対等の間であったのに、国が指示できる、従属関係にした。 2024年4月「日米共同宣言」、日米軍事同盟の歴史的大変質へ。
社会保障の大改悪による国民負担拡大
全世代型社会保障構築 世代間対立を煽り、全世代負担増をめざす。社会保障費を減らし、軍事費を賄う。介護の社会化と言って2000年介護保険を導入した。しかし、保険料を掛け続けてもサービスを受けられない、国家的詐欺の状況に。新たな地域医療構想として、病床数の一層の削減を検討している。
新たな成長戦略は破綻に直面
構造的賃上げを謳っているが、実態は26月連続で実質賃金の低下が続いており、構造的賃下げだ。 大手企業に対して桁違いの補助金を交付しているが、効果は不明。
TCMC(台湾)最大1兆2080億円、ラビダス(日本)最大3300億円、・・・ デジタル田園都市国家構想 大型事業ほど破綻が鮮明になってきた。大阪府市の空飛ぶクルマは破綻している。事業的に成り立つのか分かっていないものに補助金をつけている。
国の政策を無批判に受け入れ、発展を図ろうとする自治体も
基地、原発を交付金等と引き換えに受け入れる。リニア、新幹線等、国が進める大型開発に依拠して地域活性化を進める。自治体DX、地域医療構想、公共施設等総合管理計画、小中一貫校等を無批判に受け入れる自治体が少なくない。 公共施設の統廃合、民営化・民間委託、市民向け施策の削減、職員の非正規化が進んでいる。そのような自治体は、市民参加に消極的で、形式的な参加によって施策を進めようとしている。
このような状況で地域と市民生活はどうなるのか
地域から平和、安全が奪われる
・台湾有事を想定した自衛隊基地、米軍基地の再編強化、一体化。焦点は沖縄、九州だが、全国的に基地の再編が進む。日本が攻められていなくても、集団的自衛権に基づき日本から敵基地を攻撃すると、そこが外国からの攻撃対象となる。市民生活、まちづくりの大前提は平和だが、それが脅かされている。
・一方で、土地利用規制法、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律など、国民に関する監視が強化されている。
土地利用規制法による奈良県内の区域指定は、次の3区域である。
奈良送信所(奈良市歌姫町、佐紀町、秋篠町、山陵町、西大寺本町・・・・)
祝園分屯地(生駒市高山町)
生駒無線中継所(生駒市俵口町、菜畑町、門前町)
暮らしの基盤が崩壊
・地球環境への負荷が増大している。温暖化が進むと元に戻れない。今止めるしかない。今世紀末までに、水面が1.5m~2.5m上昇すると想定され、水面が1m上昇すると日本全国の砂浜の9割以上が失われると想定されている。日本は再生可能エネルギーの宝庫だが、取り組みは極めて遅れ、化石燃料と原発を優先している。
・災害に脆弱な地域が拡大している。地震への備え
新自由主義的な政策で地域と暮らしが破綻
・国際競争力を強化するため人件費を削減。正規雇用の減少、不安定就労の拡大、賃金の低下を招き、日本だけが実質賃金の上がらない国になった。これが消費不況を引き起こしている。
・防衛予算を増やすため、社会保障・教育予算を削減。
・人口減少による地域の衰退
地方創生の合計特殊出生率の目標は、2020年1.6人、30年1.8人、40年2.07人。しかし、実際は2023年1.2人で、統計を取り始めて最低の数値。若者が自分の将来に展望持てない状況なら、安心して結婚して子供が持てない。
・個人消費の低迷による地域経済の衰退 日本経済の50%以上が個人消費であり、ここが解決しない限り、地域経済の活性化は困難。自治体が大型公共事業、カジノに邁進するとさらに地域経済は深刻になる。大型開発で地域経済が活性化する時代ではないし、自治体財政を悪化させる。GDPは591兆円、うち個人消費314兆円、外国人旅行者消費額はわずか5兆円。インバウンドで地域を盛り上げようとするが、外国人旅行者の消費は、圧倒的に東京、大阪、京都に集中している。
・東京一極集中による地域の疲弊 東京一極集中は止まらない。東京に投資が集中しているのに是正なんかできるはずがない。
地方自治の縮小
デジタル化、標準化により自治体の独自施策、基準の縮小 デジタル化により行政の産業化 行政の主体が自治体から企業に移る 吉備中央町のスーパーシティ推進体制は、分野ごとに民間大企業が責任者となっている。 地自法改正により地方自治の後退 指定地域共同活動団体制度の導入
今、必要な自治体政策「自治と公共の再生」
国の政策から地域、市民生活を守る
地域の平和・安全、市民生活の向上、地域経済の活性化を進めるためには、国と自治体が両輪とならなければならない。しかし、国がその立場に立たないのであれば、かつての革新自治体が実施したように、沖縄をはじめとするいくつかの自治体が頑張っているように、自治体は国の政策から地域と市民を守る政策を展開すべきだ。都道府県が国に追随し、市民本位の政策を展開しない場合には、市町村が国、都道府県の政策から市民を守るべき。
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公共の再生
2000年代から各種のアウトソーシングが進み、維新は何でも民営化だ。市民生活を支える基本的な計画を企業が担うようになる。しかし、市民生活を支える基本的な計画は行政が立案し、責任を持つべきであり、基礎的なサービスは直営で行うか行政が関与すべきである。官僚的運営ではなく、市民参加を徹底すべき
・地域福祉における公共の再生
事業者任せでなく、年をとっても地域で住み続けられる保障を築く。事業者が潰れていくのを放置せず、どうサービスを維持するか行動すべき。
・教育における公共の再生 行政は教育条件の整備で、内容に口を出さないのが原則。学校、社会教育施設は統廃合ではなく、基準を改善して地域に残す。指定管理者の導入ではなく、市町村と市民の協働で運営する。
・地域経済における公共の再生、循環型経済の確立
大都市に依存、大型開発やインバウンドに依存する経済から、循環型地域経済に転換を図る。生活の場で雇用が発生している。医療、福祉・・・、近くで働ける場の確保をどうつくるか。市町村、事業者、市民が協働して地域経済のあり方を考え、実践すべき。中小企業振興基本条例等の取組みが必要だが、奈良県内で条例があるのは広陵町のみ。
・まちづくりにおける公共の再生 日常生活圏の整備 一般的には小学校区を単位にした日常生活圏に公共施設を整備する。この圏内に日常生活を支える公共的施設とサービスを計画的に整備すれば、暮らし続けられる地域になる。
・開発、インフラにおける公共の再生
鉄道、バスの維持は市民の権利、公共財として位置付ける。移動は基本的権利、どうやったら移動手段、公共交通を確保できるか。水道は行政の責任で整備、維持管理すべき。再生可能エネルギーの拡充は、企業主導のメガソーラではなく、市町村、事業者、市民の協働で進めるべき。
自治体の再生(自治と公共を再生させる要)
・自治体職員の正規化、必要な定員の確保
生活の安定、市民の立場に立った職務の遂行、専門性の形成が大切。
・必要な機構改革 民営化ではなく地域化 支所、出張所の機能拡充と権限の地域への分散。それに対応した市民組織の設置。 市民の意向を反映させるには、地域化が必要 ムダを省き効率的な行政を進める 市民の自治能力を高める
議会の活性化
全国的に議員定数の削減が進んでいるが、議会の重要性をどう市民に知らせるか 議会の公開、議会を市民の身近な存在にする 女性議員の増加、若者議員の増加 そのための議会改革が大切
地方政治が変わるとき
地方政治が動いた選挙の特徴
杉並区長選挙(2022年)、杉並区議会議員選挙(2023年)、横浜市長選挙(2021年)、大阪都構想住民投票(2020年、2015年)を分析すると、投票率が上昇、特に若者、若い女性の投票率が上がっている。
投票率が上がるということは、今まで政治、社会に不満を持っていたが、どうしていいか分からなかった層が投票に行く。社会を変えたい、地域を破壊から守りたいという票が増えることだ。今の政治、社会を概ね維持したい層は、選挙の重要性を理解しており既に投票に行っている。
地方政治を変える条件は投票率の上昇、女性、若者の投票率を上げることだ。
地方政治を変える主体
過去12年間の知事選挙を分析したところ、与野党相乗りは徐々に減少して5割を切り、野党共闘が増えてはきたがまだ1/4である。きちんとした政策と実行していく主体を分かりやすく説明する必要がある。
地方政治を変えるための4要件
政策 原因がどこにあるのか、どのような新たな政策が必要なのか
主体 どのような政治勢力が伸びれば、新たな政策が実行できるのか
方法 政策と主体を、女性、若者にどう伝えるか
継続 幅広い市民活動を継続的に行っているか
網羅的に話しても印象に残らない。ポイントを1~2に絞るのも必要。どう若者、女性に伝えるか。ネットも利用する。新聞ビラも必要だが、選挙前だけでなく、継続が必要。小さな地域のことは大手メディアではなくネットだ。ネットの活用を考えるべき。
最後に中山先生は、まちづくりは人づくり 地域に関心を持ち、地域をよくするために共同で取り組む人、言い換えれば自治能力の高い市民をつくる。人は実践を通じて成長する。市民がまちづくりに関わるなかで自治能力の高い市民に成長する。そこに市民参加の重要性がある。それは自治体にとっても最も重要な仕事だ。自治体労働者は、常に市民の自治能力の向上を念頭に置いて仕事をすべき。住民運動の大切なことは、要求実現とともに運動を通じて自治能力の高い市民を育成することと話されて、中山先生は講演を終えられました。
講演後、参加者との質疑応答がありました。主なものは次のとおりです。
Q 公共施設の建替え 除却までの費用を考慮して統廃合が適当だと当局は主張するが、どうなのか。
A 市民的に議論できているのか。市民の声を反映すべき。コスト的には集約化がいいかもしれないが、身近なところに施設がないと利用できない。施設が無くなった地域は衰退する。
Q 学校統廃合について
A 「小規模校が劣る」という学問的根拠はない。人数が少なくなれば親の心配はあるが、学校は地域の核。体育やイベントで支障があれば学校間で連携すればいい。
Q 大阪の維新をどう見るのか
A 大阪では19選挙区全部で維新が勝っているが、これは小選挙区制だから。維新は低迷している。箕面市長選挙では自民党が勝ち、維新から自民党へ戻りつつある。国政では、今まで維新に投票していた無党派層は、行き場を失って投票に行かない。立憲野党には票が戻ってない。
兵庫では、ネットで共感した若者層は、国政では国民民主党、れいわへ、知事は斎藤へ。政党に拘らず、分かりやすさで投票したのではないか。
(文責 城)