自・維連立政権合意検証【安全保障政策】【外国人政策】

投稿者: | 2026年8月20日

「第4回連立政権合意書合同研究会」が6月29日に開催され、4名の奈良研会員が参加しました。【安全保障政策】を関耕平氏(島根大学教授)、【外国人政策】を柏原誠氏(大阪経済大学准教授)が報告されました。

地域から軍事基地強化と安全保障政策を問い直す ― 関 耕平 島根大学教授 

近年、「台湾有事」や「中国封じ込め」を念頭に急速に進行する「南西シフト」の動向が、地域経済と地方財政にどのような影響を及ぼしているのかについて分析し、地域からこうした流れにどう対抗できるのかを検討する。具体的には、沖縄県与那国島、伊江島を取り上げる。宮本憲一「基地経済論」、久場政彦「離島におけるナショナルミニマム論」を理論的枠組みとする。

沖縄振興予算の恣意的運用が目に余る 

沖縄特有の行財政システムは、軍事基地問題と不可分にリンクしている。沖縄振興予算(一括計上方式、各都道府県の国庫支出金及び国直轄事業費と同じ)は、近年の辺野古新基地建設をめぐる政治的対立に伴い、知事の姿勢に対する「揺さぶり」として恣意的に運用されている。仲井眞知事時代は増額し、翁長・玉城知事時代は顕著に大幅減額をしている。また、沖縄振興予算に比べて防衛省予算が急増し、軍事基地強化、それを前提としたインフラ整備へのシフトが鮮明である。基地関連収入は、固定資産税の代償や悪影響緩和が本来の根拠であり、軍事化容認の「見返り・恩恵」ではない。 

与那国島における軍事基地強化と地域経済・地方財政

2008年「過疎化防止」のため誘致要請し、2016年駐屯地開設。開設後は、当初否定されていた日米共同演習の活発化、ミサイル部隊配備、電子戦部隊の駐留へと急速に軍事要塞化が進行している。

 基地をめぐっての住民の分断と対立、住宅不足による家賃高騰、深刻な人手不足、特養ホームの閉鎖、地域医療の指定管理者撤退、生活基盤の維持が困難なボトルネックが生じている。

 基地建設は一時的な建設バブルをもたらしたが、地域の自律的な産業基盤を脆弱化させた。建設業はピーク後激減、農業は半減した。基地経済が既存産業との連関を持たない「ザル経済」の実態。

 防衛省予算へ依存、自立の喪失で、町財政構造は変容した。 与那国島への基地経済の導入は、島の生活と生産の再生産条件を劣化させた。基地財政歳入への依存が高まれば、軍事基地のない地域の将来像を追求することが困難になる。

伊江島における軍事基地強化と地域経済・地方財政

 沖縄戦の後、アメリカ軍が銃剣とブルドーザーで強制的な土地接収を行った。現在も島の35%が米軍基地である。1989年、ハリアー機訓練受け入れを端緒に、特定防衛施設周辺整備調整交付金の増額やインフラ整備を条件とした「受認」「共存」へと舵を切った。「受苦」は基地周辺に偏在し、「受益」は島全体に分散、偏在している。島内分断が固定化している。

軍事基地強化へのオルタナティブとその萌芽 基地経済の論理に対抗する、島民の「生活」と「生産」に基づいた持続可能な地域づくりの試み

 読谷村 : 基地跡地利用において、軍事基地化以前の「土地の記憶」を継承。農地を基本とした跡地利用や「ヤチムンの里」整備により、高付加価値農業と文化産業を実践。
 与那国島の萌芽 : 「与那国織」の継承、クバの葉を用いた民芸品、棚田再生による米作り、畜産業の踏ん張り、特定重要拠点化への説明要求
 伊江島の萌芽 : 基地財源を逆手に取った「伊江牛」のブランド化、地域資源循環型農業の実践

・基地経済からの脱却

 軍事基地建設による短期的な建設バブルは、生活インフラの劣化と基幹産業の崩壊、再生産構造の崩壊を招く。持続可能な地域づくりのためには、基地経済への依存を断ち切る必要がある。

・地方財政制度の確立

 公共サービスを「基地の見返り」にさせないため、政治的意図を伴う恣意的な防衛省の基地関連交付金に頼らず、ナショナルミニマムを保障する安定した地方財政制度(地方交付金、通常補助金)の構築が不可欠。

・自律へのビジョン

 与那国島では国際交易の可能性を再検討し、軍事拠点化ではない「国境の島守」としての地方自治の自律性を確保すべき。

 日本社会における「軍事化」「安全保障化」への対抗は、平和主義イデオロギーはもちろん重要な柱であるが、「生産」と「生活」の論理(阿波根昌鴻)から出発することが重要だ。

外国人政策の批判的検討 ― 柏原 誠 大阪経済大学准教授 

政権合意書の人口政策及び外国人政策

 「わが国最大の問題は人口減少という認識に立ち、25年臨時国会中に、政府に人口減少対策本部(仮称)を立ち上げ、子ども子育て政策を含む抜本的かつ強力な人口減少対策を検討、実行する。

 ルールや法律を守れない外国人に対しては厳しく対応することが、日本社会になじみ貢献している外国人にとっても重要という考えに基づき、以下の対策を講じる。・・・

 26年通常国会で、対日外国投資委員会の創設を目指す。また、26年通常国会で、外国人および外国資本による土地取得規制を強化する法案を策定する。」

 自民維新政権は、「労働力不足の解消」としての受け入れを拡大する一方で、生活者としての権利保障よりも「秩序・管理・排除の強化」に力点を入れている。具体的な管理強化策は、多岐にわたる。

 ・不法滞在者ゼロプランの強力な推進 ・電子渡航認証制度の前倒し導入 
・永住許可の審査・取消しの厳格化    ・日本国籍取得(帰化)の厳格化 
・マイナンバーを活用した関係機関による情報連携  
・在留資格の悪用防止と実態調査の一斉強化 
・医療費未払情報報告システムの基準引き下げ   
・土地関連法制等の見直し監視強化 
・受益者負担を名目とした手数料の大幅値上げ・・・・・

 これらにより、地域で適正に事業を営んでいる小規模なエスニック料理店や日用品店などが、不当に厳しい事業審査対象となり、事業継続やビザの更新が困難に陥る事例が多発している。
 外国人が不満のはけ口やスケープゴートにされやすい最大の原因の一つは、彼らが地方参政権も国政参政権も持たない「物言わぬ民」の状態に制度的に閉じこめられていることにある。政治的権利を持たない集団は、為政者にとって「票にならない」存在であり、どれだけ叩いても選挙における反撃(落選リスク)がない。

概念の整理と事実の確認

・外国人  国籍法第4条「日本の国籍を有しない者」
・日本国民 国籍法第2条「出生の時に父又は母が日本国民であるとき 父母両系血統主義」
・住民   地方自治法第10条「市町村の区域内に住所を有する者」2012年外国人も対象となる。
・在留外国人 入管法第19条の3「中長期在留者(3ヶ月を超えて在留する者)」及び「特別永住者」旅行客(月間300万人)や非正規滞在者(7.4万人)は除く
・定住外国人 入管法第22条に基づく「永住許可」を持つ者(永住者)や、特別永住者、定住者、日本人の配偶者など
・移民   国連等では、「通常の居住地以外の国に移動し、1年以上居住する人」と定義。日本政府は移民政策をとらないとしているが、実体的には巨大な移民受け入れ国である。在留外国人412.6万人から在留期間が3ヶ月以上1年未満の人を差し引いた数 

統計から見る事実

・在留外国人は4,125,395人(2025年12月末)となり、過去最高数 
 中国93万人、ベトナム68万人、韓国40万人、フィリピン35万人、ネパール30万人・・・  
 特別永住者26万人、永住者94万人、技術人文知識国際業務47万人、技能実習45万人・・・ 
・日本人人口が年間90万人のペースで減少する一方、外国人が年間36万のペースで増加。日本人の減少分の「約4割」を外国人が穴埋めしている。

・産業別外国人就労者依存度の激増(2014年 ⇒ 2024年) 
 建設業   1/246人 ⇒  1/27人   9.1倍 
 医療福祉  1/634人 ⇒  1/79人     8倍 
 漁業    1/99人   ⇒  1/19人    5.2倍
 農業林業  1/119人 ⇒  1/31人    3.8倍
 全産業平均 1/81人   ⇒  1/29人   2.8倍
・居留地は依然として三大都市圏に集中しているが、確実に地方へ拡散している。
・日本人は少子高齢化により逆ピラミッド型であるが、在留外国人は20~30歳代の若者層が圧倒的多数を占める。
・治安の悪化の否定  外国人による刑法犯検挙件数は2005年をピークに大幅に減少している。
・福祉のただ乗りの否定  国保に加入する外国人は若者層が中心であるため、一人あたりの医療費消費額は極めて低い。年金や医療を支える強力な担い手として機能している。

・データから見る結論

 地方では、地域社会・地域経済を維持するために外国人との共生が不可欠かつ地域の持続性の前提となっている。減少した人口を人口政策だけで回復することは不可能である。仮に、合計特殊出生率が人口維持水準の2.1になったとしても、生まれた子どもが人口を再生産するには約20年かかる。さらに、人口減少は予測より早期に進んでいる。そのマイナスの影響を緩和するために、外国人への依存度は好むと好まざるとに関わらず、高まらざるを得ないのが日本社会の現実である。

 法的・制度的枠組みの変容と構造的欠陥

①かつての「帰国を前提とした労働型(技能実習)」から「身分に基づく定住型」や定住移行を前提とした資格へのパラダイムシフトが進行している。在留資格の多様化と定住化へ移行している。
 在留資格別の外国人数の推移(2018年 ⇒ 2022年)は次のとおり。   
 永住者           77.2万人 ⇒ 86.4万人 
 専門的・技術分野での就労  35.1万人 ⇒ 58.4万人  
 家族滞在          18.2万人 ⇒ 22.8万人

②国(法務省)が「国境管理」を担う一方で、「居住支援・社会統合」の実務は地方自治体に丸投げされている。ここに、労働力として位置付ける「実利志向」と生活者として位置付ける「人権保障・生活支援」が矛盾したまま併存している。諸外国に見られるような「多文化共生社会基本法」や省庁横断の司令塔となる「多文化共生庁」が存在しないことが、地方自治を考えるうえでの構造的欠陥である。

③地方自治体の「多文化共生推進プラン」の策定状況は、都道府県や政令都市では100%、市区町村で53.3%、うち町村部では策定が遅れている。基本法がないため、補助金や交付金も整備されにくい、自治体の一般財源が中心のため、自治体の規模や財政力による対応の格差が浮き彫りになっている。

地方自治と多文化共生の課題

①外国人の地方参政権と排外主義の政治的台頭

 1995年の最高裁判決「永住外国人等に地方選挙権を付与することは憲法上禁止されていない」と判示したが、国政レベルでの法制化は頓挫したままである。逗子市や豊中市では自治基本条例等に基づく「常設型住民投票条例」において、外国籍住民に投票権を認めている。富田林市や川崎市では「外国人市民代表者会議」を設置し、当事者の声を市政に反映させる仕組みを機能させている。また、帰化を通じて日本国籍を取得し、地方政治の舞台に直接参画する元外国籍の政治家も誕生している。しかし、血統による明確な差別と排除を制度化する動きが現れている。

②地方公務員任用における「国籍条項」問題

 1953年「公権力の行使や国家意思の形成に参画する公務員には日本国籍が必要」との内閣法制局の回答が長らく任用の壁となっていたが、1996年川崎市が消防職を除く全職種で国籍条項を撤廃したことを契機に、多くの自治体で一般職の門戸が開放された。しかし、右傾化の揺り戻しが起きている。

 また、民生委員・児童委員にも国籍条項が残っており、当事者が支援の担い手になれない矛盾がある。

③「産業の担い手」から「地域の担い手」へ

 これまでの外国人政策は、外国人を単なる「安価な労働力」や「産業の担い手」としてのみ消費してきたが、今後の地域づくりにおいては、彼・彼女らを町内会、PTA、消防団などに参画する「地域の担い手(生活者・主権者)」として包摂していくことが必須の生存戦略である。

(文責 城)

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