自民・維新『連立政権合意書』合同研究会の第1回合同研究会が4月17日に開催され、【医療関連政策】を長友薫輝氏(佛教大学教授)、【統治機構改革】を中山徹氏(奈良女子大学名誉教授)が報告されました。その概要を紹介します。
医療政策を検証する ―
長友 薫輝 佛教大学社会福祉学部教授
4兆円を削減するという無理な「改革」で多方面の人々が苦しめられている。この感覚を共有したいとして、報告を始められました。
憲法が描く社会保障の機能と役割
①社会保障には税とともに所得再分配という機能があるが、現在この所得再分配機能が低下している。
②誰もが安心して生きられる社会をつくる。多様性の保持
③安心してお金を使うことのできる社会をつくる。個人消費が拡大する方向への舵取りができる。
保健・医療・介護・社会福祉は、地域経済、地域の雇用の拠点
地方において、保健、医療・介護・社会保障は、地域経済、そして地域の雇用の拠点という視点が欠かせない。社会保障は地域の重要な産業の一つで、公共事業よりも雇用面での貢献が大きい。
皆保険体制と医療提供体制が危機的な状況にある
日本の医療保障は、「公的医療保険による皆保険体制」と「医療提供体制」で成り立っている。この皆保険体制・医療提供体制は、いずれも患者・地域住民、医療機関、自治体の要求が一致する点が多い。私たちは主権者として、地域の(医療)構想と創造を展開するという意識が大切。受療権・健康権・生存権保障を進めてこそ、地域経済も循環する。
医療費 年額4兆円の削減 ― 自公維の3党合意、自民維新連立政権合意(2025年10月20日)
国民医療費は年間48兆円、その1割近い医療費を削減することになる。医療費4兆円削減の名目は「現役世代の社会保険料の負担軽減」で、1人当たり年間6万円引き下げることが可能とした。
「OTC類似薬」を含む薬剤自己負担の見直し、金融所得の反映などによる応能負担を徹底する。
R8年度予算編成の基本方針(2025年12月9日)医療制度改革法案(2026年3月13日閣議決定)
全世代型社会保障の構築を通じ、応能負担の徹底等、各種の制度改革を行うことで、持続可能な(抑制的な)社会保障システムの確立を図る。
高額療養費の見直しで、社会保険料年間1,400円軽減(月額117円)
OTC類似薬等の追加負担分で、社会保険料年間800円軽減(月額66円)
OTC類似薬の保険外し 一部保険外療養制度の創設、国民皆保険制度の趣旨から逸脱へ
OTC類似薬とは、ドラッグストア等で医師の処方箋なしに買える市販薬「OTC医療品」と成分や効能が類似するもの。アレグラ、ロキソニンなど77成分、1100品目の薬代の負担(窓口負担3割)が実質的に5割負担になる。1000円の薬なら、自己負担が300円から500円になる。
薬剤だけでなく、診察や処置、在宅医療なども保険給付から外すことも可能にする。
全世代型社会保障改革とは? 働かざるを得ない状況をつくる
①雇用・労働をめぐる改革
高齢期にある人々を労働力として動員するだけでなく、女性や非正規労働者、障害のある人々も働かざるを得ない状況を創出する。これが「雇用創出」で、社会保険料の支払いや税収の増加を見込む。
2025年、労働力人口は過去最多となり、7000万人を初めて超えた。主に高齢者と女性の労働力が増大した。2026年4月からは在職老齢年金の見直し(年金支給停止基準額を65万円に引き上げ)など、働かざるを得ない環境が進んだ。
②社会保障費抑制・削減策
公的医療費抑制策の主な手法 1980年代~
①受診抑制 患者自己負担割合を増加
②供給抑制 病院・診療所の減少、病床の削減、在院日数の短縮化、医師養成数の抑制、医療計画・・
③診療報酬の操作 2024年度に介護報酬、障害者福祉の報酬単価の「トリプル改定」
④他分野への移行 介護保険への移行、後期高齢者医療制度の創設
⑤生活習慣病対策 特定検診、特定保健指導
⑥医療費適正化計画の推進 都道府県ごとに医療費適正化レースに参加
⑦国保の都道府県単位化 都道府県に医療費抑制の管制塔と財政運営責任の役割を担わせる
国保の被保険者数の減少、県への納付金の増加
被用者保険への適用拡大方針により、国保から被用者保険に移行する人が増加。それも国保の中では比較的所得が高い人々が被用者保険に移行した。また、団塊の世代が後期高齢者医療制度に移行した。
その結果、愛知県では国保納付金が5年間で30%強も高額になった。
子ども・子育て支援金を医療保険料に上乗せして徴収
社会保険は「第2の税金」。皆保険・皆年金体制は搾取・収奪の仕組みでもある。「増税といえば選挙に負ける」と与党が判断すると・・・、子ども・子育て支援金の原資を2026年度から医療保険料に上乗せして徴収する。これは合理的理由ない徴収であり、搾取である。国庫負担を私たちの負担に置き換えるものだ。
公的医療保険の保険給付を削減
OTC類似薬を保険適用から除外する
高額療養費制度を見直して自己負担増を図る
医療提供体制を縮小する 2027年度から始まる新たな地域医療構想策定までに病床削減を急ぎ、開業規制等を進めるなど、供給抑制を図る医療費抑制の手法
新たな地域医療構想が始まる2027年4月までに11万床を削減し、医療費1兆円を削減する 合意に基づく病床削減
一般・療養の56,000病床、精神の53,000病床を削減する。
「病床数適正化支援事業」稼働病床に4,104千円/床、休床に2,052千円/床を支払い、病床を削減する。これで、稼働病床6万床、休床3.8万床の削減を見込んでいる。
新たな地域医療構想の策定 (省略)
どう対抗するか 人権保障のにない手の水準を大幅に引き上げることが重要
保健・医療・介護・社会福祉の現場で働く人々の給与水準は人権保障の尺度でもある。患者・地域住民の人権保障に連動している。コロナ禍においても懸命に働き続けた人々の給与は増額されず、労働環境の改善は進んでいない。診療報酬の上昇は10%以上ではなく、わずか3%。他産業への転職等も相次ぐ状態。人権保障という観点からも、社会保障抑制策の転換を図り、対人ケア労働に従事する人々が働き続けることができる職場を構築していく必要がある。
統治機構改革(副首都)について ―
中山徹 奈良女子大学名誉教授
自維連立政権合意書 十一 統治機構改革
首都の危機管理機能のバックアップ体制を構築し、首都機能分散および多極分散型経済圏を形成する観点から、25臨時国会中に、両党による協議体を設置し、首都および副首都の責務および機能を整理した上で、早急に検討を行い、26年通常国会で法案を成立させる。
経緯 副首都は維新の思惑から
2015年5月 大阪都構想住民投票(1回目)⇒否決
2015年12月~ 副首都推進本部を設置
2020年11月 大阪都構想住民投票(2回目)⇒否決
2025年10月 自維連立政権合意書 十一 統治機構改革
2026年3月 自民維新「副首都法案の骨子案」発表
副首都法案の骨子案
・副首都の目的 副首都の経済成長を通じた東京一極集中の是正、非常時における首都の代替機能
・副首都について政府がとる施策
・事業者等によるバックアップ投資促進に必要な税制上の措置その他必要な施策
・首都中枢機能の代替のための拠点整備、都市機能の増進に寄与するまちづくりの推進、規制緩和、民間投資の促進に必要な税制上の措置等
なぜ副首都か 維新の狙い
・大阪都構想を動かし、維新の改革政党としてのイメージを保つため
大阪都構想が実現できれば大阪が副首都になれる。大阪を副首都にしたければ大阪都構想に賛成すべき。このような世論が形成できれば3回目の住民投票に勝てるのではないかという思惑。
・政府の財源、特例的な規制緩和等で大阪の地域経済の活性化を進めるため
大阪の経済は低迷している。(2011年と比較して2022年の値は)人口では、東京や愛知は増加しているが大阪は99.1と減少している。県内総生産の伸びは、大阪は105で全国平均の107を下回っている。完全失業率(2024年)は、大阪3.1%で全国2.5%より悪い。看板だった医薬品の製造も落ち込みが激しい。維新の成長戦略から15年たつが、大阪経済が低迷しているのは明らかである。低迷が続くと維新の支持率を上げるのは困難。そこで、副首都に指定され、政府の予算、税制措置、特別な規制緩和等で大阪経済の活性化を進めたい。
論点整理 ①副首都は必要か?
大規模な自然災害によって、東京で国会、中央省庁が機能しなくなった場合、その代替機能を別の場所で確保することは必要。それならば、それに限定して議論を進めればいい。また、地方分権を着実に進めることも重要だ。ところが骨子案は、副首都が東京一極集中を是正する牽引車となり、東京とともに日本経済を支えるために、副首都に対して特別の財政措置等をとろうとする経済対策的側面が強い。 副首都になることで維新が進めようとしているのは、今まで維新が進めてきた大型開発、規制緩和、高速道路などのインフラ整備である。地域経済が低迷している最大の原因は消費不況であり、そこにメスを入れない限り、地域経済の活性化はありえない。大阪以外に、福岡、愛知でも副首都に関心を示しているが、そこで大型開発などを進めても、東京一極集中の是正は進まず、ブロック内での集中が進むだけである。 そもそも首都について、首都圏の範囲はあるが、首都についての明確な地域範囲はない。都なのか23区なのか不明だ。副首都を決めるなら、先ず首都を決めるべきだ。
論点整備 ②三度目の住民投票は許されるのか
維新は副首都に指定されるため、大阪都構想の住民投票をもう一度行おうとしている。2回とも否決されているのに、ほとんど同じ内容で3回も住民投票を実施することが民主主義の視点からいかがなものなのか。「勝つまでじゃんけん」が許されるものなのか。
論点整備 ③住民投票を誰がするのか
吉村維新代表は、都構想の住民投票+大阪府の名称変更の住民投票を、両方とも大阪府民対象に同時に実施して、⇒副首都の指定を受けるとしている。
一般的には、都構想の住民投票(大阪市民対象)⇒副首都の指定⇒大阪府の名称変更の住民投票(大阪府民対象)と考えるのが妥当だ。
そもそも府→都の名称変更に住民投票が必要かの疑問がある。かつ、大阪市を廃止して特別区を設置する住民投票を大阪市民以外の府民が投票できるようにすることは、住民自治の観点からきわめて大きな問題だ。 (文責 城)