地方財政 ~ケーススタディから考える~

投稿者: | 2026年3月24日

自治労連・地方自治問題研究機構主催 第2回「デジタル自治と分権」ゼミ

2月19日夜、標記ゼミがオンラインで行われました。「多くの自治体で財政難が叫ばれ、公務員労働者の賃上げにも影響が出ています。しかし、一歩立ち止まって見れば、当局の説明とは違った実態が見えてきます。今回はある自治体のケーススタディから財政の見方を学びましょう。」という趣旨のゼミです。講師は平岡 和久さん(立命館大学名誉教授、専門は財政学、地方財政論)、3名の奈良研会員が受講しました。

「失われた30年」と日本経済、地域経済の停滞 実質賃金の低下と格差拡大

輸出大企業と中小零細企業との格差拡大、外貨建て資産や不動産を持つ富裕層と限られた円資産を持つ中低所得層との格差拡大、企業の内部留保2024年度末637兆円で過去最高、労働分配率は53.9%で1973年度以来の低水準、実質賃金は11ヶ月連続のマイナス。

自治体財政の悪化

2024年度市町村普通会計決算をみると、全市町村分の実質単年度収支が2年連続で赤字、経常収支比率も前年度より0.7ポイント上昇しており、相対的に財政が悪化している自治体が多い。一方で、実質公債費比率は横ばい、将来負担比率は下降傾向が続いており、自治体財政における債務の比率は低下傾向にある。

自治体「財政難」の背景

・短期的なマイナス要素として、円安インフレの影響によるエネルギー・物価高、人件費増、2026年度普通交付税算定における2025年国勢調査人口適用の影響、トランプ関税による経済悪化への懸念の他、ガバメントクラウドとも関連した情報システム運用経費の増加など。

・中長期的、構造的な財政悪化の要素として、医療・福祉関連経費の増加、インフラ・公共施設の老朽化と維持・更新費用増加、少子高齢化などに伴う税収減など。

・個別事情として、大型公共事業を多く抱えている自治体は「財政難」を強調する傾向がある。労務費、資材費などの建設費の増大による。

国の地方財政対策と自治体財政

地方財政対策において、物価高騰や人勧を織り込んだうえで地方一般財源総額が確保されており、通常なら財政難をことさら強調する必要はない。自治体としても、経費増は当面事務事業の見直しを含む財政のやり繰りで対応可能な場合がほとんどであり、職員給与にしわ寄せする必要はない。 しかし、国の想定を超えて物価高騰の影響が深刻化すれば、地方一般財源保障が不十分になる。資材費、労務費の急増による普通建設事業の入札不調、扶助費の増加、上下水道会計、公立病院会計の経営悪化を招くことになる。

2025年度補正予算における物価高・人件費増への対応

政府の当初の地方財政計画で、既に人勧にもとづく給与改定に備え、給与改善費2,000億円が計上されており、その分が7月段階での普通地方交付税算定に反映されている。また、11月補正予算によって、給与改定に係る交付税増額4,200億円が手当てされる。

2026年度政府予算と地方財政対策

地方一般財源総額は+3.7兆円(+5.9%)、物価高・官公需の価格転嫁への対応5,850億円、教育無償化に係る地方負担への対応3,600億円、7年度人勧に伴う給与改定への対応分6,800億円(うち会計年度任用職員800億円)、8年度の給与改定に備え「給与改善費」4,000億円、国の地方財政対策を反映した市町村の普通交付税の算定、 基準財政需要額の個別算定経費+2.5%、包括算定経費+3.5%  ⇒自治体には職員の給与改定や官公需の価格転嫁等をしっかり行う責任がある。

自治体「財政難」のタイプと問題点

大半の自治体は物価高・人件費増により財政状況が厳しくなるなかでも給与改定を前提として事務事業の見直しや事業の先送り、退職手当債による退職手当平準化などで対応している。しかし、業務の見直し、デジタル化等による会計年度任用職員の定員などの見直し、あるいは委託費や指定管理料に関する協議で十分に要求に応えられないケースもある。⇒非正規職員や地元事業者・地域団体などへのしわ寄せ
 大型のインフラ・施設整備や多くの施設の改築等を予定している自治体で事業費の急増に直面し、財政難を訴えるタイプがある。⇒事業の見直しや先送りが必要 
 物価高騰や経済情勢悪化をことさら強調して財政難を訴え、乱暴な行財政改革を進めるタイプもある。⇒財政状況の正確な分析と行財政改革の見直しが必要

自治体財政の状態を把握するためのポイント

・中期財政見通しとその試算前提の詳細を検討する。
・予算編成方針とあわせて財政見通しを示している場合はそれをチェックする。歳入の過小見積、歳出の過大見積などをチェックする。予算ベースで財政見通しを立てている場合、過年度の予算と決算を比較し、乖離状況をチェックする。財政見通しの前提としての投資事業の実施計画とその財源構成をチェックする。
・財政見通しを示していないのであれば、必要な改定を行わない根拠がないので、財政見通しを出させる。(その際、総額でなく一般財源ベースで出させる。)

自治体財政分析の実際 京都府城陽市のケーススタディ(省略)

まとめ

物価高騰、人件費増及び国の施策に伴う地方負担増に対しては、国の地方財政対策による財源の手当があり、通常は自治体財政を維持しながら対応は可能。しかし、地方財政はインフレが長期間続くことによる機能不全が起きつつある(地方財政対策が追いつかない事態)。インフレ下の自治体財政運営においては、従来の財政運営とは異なる対策が求められる。人勧に対応した給与改定のみでなく、委託費や普通建設事業費などに対してインフレに対応した引き上げが必要。

 インフレは特に大規模なインフラ・公共施設整備を抱かえる自治体における深刻な影響を与える。開発主義的行財政運営からの転換が求められる。  

 自治体財政危機の正確な現状把握、財政危機の起因と責任の所在の明確化、優先順位を明確にした財政再建が必要。財政難を過度に煽る手法をとるケースにも注意が必要。
 自治体労働運動と住民運動との連携に期待する。 
 最後に、財政分析の習慣づけが必要、忙しくてやれないというけど、ルーティン化したらいいと話して、平岡先生は講演を終えられました。

            (文責 城)

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